【無料全文公開】「ボリンジャーバンド」を理解する その1[マックス岩本]
フォーメーション分析に続き、今回からは「ボリンジャーバンド」について学んでいただきます。ボリンジャーバンドは統計学を用いたメジャーなテクニカル指標ですが、その特性を表面的にしか理解していない人も多いのではないでしょうか。ここではマックス岩本さんに、ボリンジャーバンドの基礎から実践的な活用法までを徹底的に解説してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
マックス岩本さんプロフィール
いわもと・けいすけ。「中卒認定テクニカルアナリスト」という異名の通り、アナリスト業界ではまれに見るノー学歴。学歴社会が色濃く残る昨今でも、そんなことがいっさい関係しないFX市場を相手に日々奮闘中。「誰もが気軽にFXを始められる今だからこそ、しっかり勝ち続けられる技術を身につけてほしい」という気持ちで、連載やセミナー講師を務めています。
特徴を把握することで高い効果が期待できる
前号まで6回にわたりフォーメーション分析について解説してきましたが、今号からは「ボリンジャーバンド」を取り上げ、基礎から応用、実践的な活用方法をお伝えしていきたいと思います。
まず、あなたはボリンジャーバンドと聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 中には“移動平均線を応用した逆張り指標”というイメージをお持ちになる方もいらっしゃると思います。ただ、私としてはそういった偏った見方・使い方をするにはもったいない指標だという認識があります。
ボリンジャーバンドを活用して失敗する方の多くは、偏った見方をしすぎることと性質の理解が甘いことが原因となるケースが多いです。ボリンジャーバンドは、その特徴をしっかりと理解し、幅広い視野を持って活用することで、より高い効果を発揮させることができる指標の一つですから、今回を機に知識を深め、ぜひ活用してみてください。
特徴を把握することで高い効果が期待できる
第1回となる今回は、ボリンジャーバンドの基本的な概要について解説してまいります。ボリンジャーバンドは、1980年代初めにジョン・ボリンジャーによって考案されました。現在では、数あるテクニカル指標の中でも代表的な存在として、多くのテクニカル分析愛好家に利用されています。
ボリンジャーバンドは、ミッドバンドと呼ばれる移動平均線を中心に五つのラインで構成されます(チャート①参照)。ミッドバンドの直上に推移している赤いラインが+1σ(プラス1シグマ)、その上の水色のラインが+2σ(プラス2シグマ)。反対にミッドバンドの直下に推移しているのが−1σ(マイナス1シグマ)、その下が−2σ(マイナス2シグマ)です。
なお、移動平均線を中心に上下に一定の乖離を持つバンドを設けるという点では、類似したテクニカル指標にエンベロープがあります。エンベロープは移動平均線に対して5%や10%など一定の比率で乖離を持つラインを描画するのに対し、ボリンジャーバンドはそれに統計的な要素を盛り込んだのが大きな特徴です。
具体的には、移動平均における価格変動の標準偏差を算出し、その標準偏差の一定倍率を乖離させたラインを描画したものです。チャート②はボリンジャーバンド(±3σ)とエンベロープ(1%)を比較したもので、移動平均線の算出にあたっては両指標とも期間20を採用しています。どちらも移動平均線を応用したトレンド系指標という点では共通で、いわば親類関係にありますが、それぞれのインジケーターが意味することには大きな違いがあります。
エンベロープは大きく動いているときでも値動きが小さいときでも、常に移動平均から上下に1%乖離したところにバンドが推移する一方、価格のばらつきに注目して標準偏差を用いたボリンジャーバンドは、価格変動が小さいときには標準偏差も小さくなることによってバンド幅が狭まり、価格変動が大きいときには標準偏差も大きくなりバンド幅が拡大します。
このように、二つの指標で同じパラメーターを採用した場合にはバンドの中心の移動平均線から見る相場の方向性にこそ違いはないものの、各バンドの水準には大きな違いがあり、価格変動の大小によって伸縮するボリンジャーバンドの方が、より柔軟性が高い指標であるということがお分かりいただけると思います。
逆張り指標ではなくトレンド系の指標
ボリンジャーバンドの考え方は、価格が移動平均に対して±1σで収まる確率が68.3%、±2σで収まる確率が95.4%、±3σで収まる確率が99.7%であるという統計学です。この想定のもと、価格がこのバンド内で推移する性質を利用して、各ラインへの接近をもって売買タイミングを見いだすというのが基本的な活用方法です。
しかしこれだけ聞くと、“+2σを超える、−2σを割り込む可能性は5%以下の特異な現象だから、それが長く続くことはあり得ないはずだ。だとすれば、+2σの突破は買われ過ぎで−2σの下抜けは売られ過ぎである。すなわち、+2σの突破局面で売り、−2σの下抜け局面では買えばいんだ”という勝利の方程式が成り立つかと思いますが、これは大きな間違いです。
もちろん、局面によっては±2σ到達をもってトレンド転換に至ることもあるため、必ずしも損失を被るとは言い切れませんが、そこだけに注力してトレードをしてしまうと遅かれ早かれ手痛い目に遭うことでしょう(チャート③参照)。
いかがでしたでしょうか。ボリンジャーバンドは単なる逆張り指標ではなく、むしろ移動平均線を応用したという点では、れっきとしたトレンド系指標です。それも、マーケットの方向性を示すだけでなく、標準偏差から一定期間におけるボラティリティの大きさや相対的な水準を教えてくれるため、万能指標であるといって良いでしょう。
今回は概略部分のみの解説となりましたが、次回はボリンジャーバンドのさらなる魅力と具体的な売買タイミングに踏み込んでいきたいと思います。
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