これからの外国為替場の行方 第109回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
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※この記事は、FX攻略.com2019年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
米・日株価の好調推移で市場のムードはリスクオン
前回更新分の本欄で、筆者はNYダウ平均について「節目の75日移動平均線(75日線)などをクリアに上抜ける動きとなってくれば、次は12月3日高値=2万5980ドルを意識することになる」と述べた。そして案の定、NYダウ平均は1月下旬に75日線をクリアに上抜け、執筆時点では昨年12月3日高値をも上抜けて2万6000ドル台に乗せる展開となっている。まして、2月11日には25日線が75日線を下から上に突き抜けるゴールデン・クロスが示現することとなり、以降は75日線自体が上向きで推移している。
想定していた以上の勢いで米株価は上昇しており、昨年10月3日につけた史上最高値=2万6915ドルまで、あと3%程度に迫っている。当然、金融市場全体のムードはリスクオンに傾き、足下で発表されている米経済指標が弱めの結果を示すケースが少なくないにも拘らず、ドルは全般に強い基調を堅持している。
連れて、日経平均株価も一段の戻りを試す展開となっており、2月半ば以降は2万1000円を超える動きとなってきている。前回更新分の本欄でも述べたように、2万1000円の節目をクリアに上抜けてきたからには、中期的に2万3000円処まで目線が上がっておかしくない。仮に日経平均株価が一段の上値を試す展開が続けば、市場でいたずらに円買い圧力が強まるといった事態も避けられることとなろう。後に具体的な目安を示すが、結果的にドル円の上値に一定の余地が生じる可能性も大いにある。
周知のとおり、執筆時の市場が何より注目しているのは、米中貿易協議の行方であり、交渉の進展を伝える日々のニュースが株式相場を下支えしている。本稿が読者の目に触れる頃には大方明らかになっていることだが、とりあえず3月1日に予定されていた米国による対中関税引き上げの猶予期限は、執筆時点で期限先延ばしとされる見通しである。両国間での隔たりが大きかった中国での知的財産権保護策などの構造問題についても、一定の進展はあったとされている。なおも交渉の時間を要する問題であることは明らかだが、両国ともに自国(というより、中国の一党独裁体制とトランプ米大統領の再選を目指すシナリオ)が決定的なダメージを被るような方向に持って行きたくない意向であることも、また明らかである。
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