外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|為替相場の力関係を知るための複数通貨ペアの見比べ法】
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
2019年の為替市場では、年初の急落からの反転上昇機運が鮮明になりつつあります。そこで今回は複数の通貨ペアを見比べることで、現在の為替市場を動かす要因を解きほぐしてみましょう。相変わらずドル高基調が続く2019年ですが、年央にかけては「ユーロ安」や「新興国通貨のリバウンド」など“弱い者比べ”がメイントレンドになるかもしれません。
※この記事は、FX攻略.com2019年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
ドル高というよりユーロ安が影の主役。膠着が続く為替市場は“弱い者比べ”に突入!?
年始早々の外貨急落で幕を開けた2019年。その後は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ路線の後退、米中貿易戦争の落ち着き、閉鎖されていた米政府機関の再開などもあって、リスク回避の流れが後退していきました。逆に、リスクオンに向かっているような印象すら受けます。特に最大の懸念材料だった米中通商協議で中国に対する関税引き上げ期限の先送りが決まったことが、中国経済はもとより米国や日本にとっても大きな好材料になりそうです。
為替市場で「ドル高」トレンドのけん引役になっている好調な米国経済は、2月に入っても雇用統計やNY連銀発表の製造業景況指数など良好なものが大半です。2月発表の鉱工業生産指数や小売売上高、週間失業保険申請件数が予想外に悪化するなど、まだら模様な部分もちらほら出てきましたが、米国経済がただちにリセッションに入る可能性は極めて低いといえるでしょう。日米欧を比較した場合、明らかに底力の違いを見せています。
一方、懸念材料が満載といっていいのが欧州です。域内のけん引役であるドイツの経済低迷がユーロ圏全体の成長を押し下げていると見られています。イタリアの成長率も1.2%から0.2%へ引き下げられました。ドイツやフランスでの政治的な不安定さも顕著で、為替市場ではドル最強・ユーロ最弱の構図が鮮明になっています。
チャート①は2018年10月に1ドル114円台の高値をつけ、2019年1月年始に一時、1ドル104円台まで急落したドル円の日足チャートです。ドル円は急落した年始1月3日の最安値104円台から、その日のうちに107円台まで回復。その後、1月から2月にかけて、108円台、109円台、110円台、111円台と、亀のように遅い歩みながら、じわじわ上昇を続けています。
しかし、2月後半現在、上値の111円台に120日、200日移動平均線が位置しており、上昇を阻む抵抗帯になりそうです。その上の112円台にも、昨年10月以降の高値圏でのレンジ相場の下限が抵抗帯として控えています。
一方、下値の109円台には、年始急落の影響で大きく切り下がった一目均衡表の雲があり、米中貿易戦争など、よほど大きな悪材料が噴出しない限り、当面は108円~112円台という非常に狭い値幅で推移しそうです。
MACDは0ラインより下でシグナルとゴールデンクロス。2月中旬には0ライン越えを果たしました。ある意味、年始の急落で、煮詰まった状況からあく抜けした感じもあり、「上か下か」と訊かれれば、上昇含みのレンジ相場が続きそう、という予想が妥当に思えます。
相変わらず、膠着した横ばい状況が続く外国為替市場ですが、為替相場は複数の通貨の力関係が複雑に影響し合う「網の目」のようなものです。同じドル高でも、たとえばユーロドルが極端に弱いと、それにつられるようにドル円もじわりと上昇するなど、他の通貨の動きが別の通貨ペアの値動きにも、陰で大きな影響を与える構造になっています。
そこで、今回はさまざまな通貨ペアの値動きを同時に見ることで、外国為替市場における通貨同士の“綱引き”の全貌を探ってみることにしましょう。
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