外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|2019年の相場展望と主要通貨のメインシナリオ】
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
すでに1か月近くが経過しましたが、2019年の為替相場は米中貿易戦争、それにともなう世界経済の減速懸念もあり、不安定な展開になりそうです。とはいえ、いまだ米国経済は絶好調そのもの。利上げのペースはゆるやかになりそうですが、絶対的な金利差から見て、今年もドル独歩高がメイントレンドになる可能性は高いといえます。2019年の主要通貨ペアの行方を展望してみましょう。
※この記事は、FX攻略.com2019年3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
ドル円は104円~118円台のレンジ相場が続きそう。下値100円は鉄板か!?
今回は年始最初ということで、2019年の為替相場を展望しましょう。使うのは、長期月足・週足チャート。上昇・横ばい・下落のうち、どの方向性がメインシナリオになりそうかも考察してみたいと思います。
今年2019年に至る為替相場のトレンドといえるのは「米ドル高」です。ドル円だけを見ていると、狭い値幅でレンジ相場が続き、時にはリスクオフの円高が進むこともあって、「ドル高」がそれほど意識できません。しかし、外為オンラインのブラウザ版チャートなどでユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドル、NZドル米ドルなどの月足・週足チャートを見れば、どの通貨ペアもレンジ相場の下限近辺か下限を突き抜けたあたりで推移し、2018年後半からはドル独歩高に拍車がかかっています。
なにかとお騒がせなトランプ大統領ですが、「アメリカ・ファースト」ならぬ「米ドル・ファースト」が続くかどうか、それが2019年のメインテーマといえるでしょう。ちなみに、米国第一を唱えているトランプ大統領がドル高を非常に嫌っている点も、このテーマの重要ポイントです。
2018年のドル独歩高の原動力は、言うまでもなく、トランプ減税の効果もあって力強い成長を続ける米国経済です。好景気が過熱しないよう、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続け、他の通貨との金利差がどんどん拡大したことがドル高をけん引してきました。一方、最大のリスク要因は、米中貿易戦争の影響が中国だけでなく米国経済にも及ぶこと。トランプ大統領の圧力もあり、パウエル議長率いるFRBが利上げ打ち止めを匂わせれば、金利差拡大の終了がドル安要因になります。
むろん、利上げ打ち止めが「適温経済」の復活を連想させ株高につながれば、ドル高要因になる可能性もあります。逆に、利上げを止めざるをえないほど米国経済に減速懸念があるとなれば、急激な円高要因になるでしょう。
利上げや米国長期金利の上昇は、ドル円相場にとってポジティブ/ネガティブの両側面があり、ある意味、「諸刃の剣」です。どちらに振れるかは相場の流れ次第の面もあるので、小難しい理屈で考えるより、チャートを見て、素直に順張りで値動きに追随するスタンスで臨むべきです。
チャート①はドル円の2007年からの長期月足チャートに2年(24か月)、4年(48か月)移動平均線、一目均衡表の雲、MACDを表示したものです。
2018年12月現在のドル円は4月安値104円台から10月初旬高値114円台への上昇で一目の雲の上まで浮上。右肩上がりの4年移動平均線前後にあります。より大きな視点で見ると、2019年のドル円は、トランプ相場の頂点になった2016年末の高値118円台、それ以降の安値104円台を上限・下限にした、非常に狭いレンジ内での横ばい相場に終始するのがメインシナリオになりそうです。
2018年4月以降はゆるやかな上昇トレンドが続いており、2019年中にトランプ相場の高値118円台を突破する上昇シナリオも描けます。今後もFRBが利上げを続け、日米金利差が現状の2%台から3%後半まで拡大すれば120円台到達もありえますが、さすがにアベノミクス相場の頂点である2015年6月高値125円台まで上昇するのは難しそうです。
一方、下値目途は一目の雲やこれまでの安値、もみ合いゾーンが集中する100円台。日米金利差を考えると、米国経済が2019年に急激な失速に見舞われない限り、1ドル100円の壁は“鉄板”のようにも見えます。
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