天然ゴム2年ぶりの安値圏へ[佐藤りゅうじ]
佐藤りゅうじさんプロフィール
さとう・りゅうじ。1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー ドイサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。
公式サイト:佐藤りゅうじブログ
※この記事は、FX攻略.com2019年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
2016年9月以来の安値を記録
11月、「パプアニューギニアで開かれていたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議は、同会議が開催されて25年、初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕した」というニュースがメディアで大きく報じられました。原因は米中の対立で、これが素材価格に大きな影を落としています。2018年10月号で「安値模索のゴム相場」と題し、天然ゴム価格の下落を追いかけましたが、今回は、その後の天然ゴム市場の流れを見ていきます。
まずゴム相場の大きな流れを、東京ゴム先限の週足チャート(呼び値1キログラム)を見ながら簡単に振り返りましょう(チャート①参照)。最初に目につくのは、2016年11月から2017年1月までの急騰です。この背景には、産地の天候不順、天然ゴム最大の消費国である中国の公共事業増加、そして最大の要因は、米国でトランプ氏が大統領選に勝利したことに端を発した株高・商品高が挙げられます。いわゆる、トランプラリーです。2016年11月の始値は183.0円でしたが、翌年1月31日には366.7円まで上昇しました。わずか3か月で価格が2倍以上に跳ね上がったわけです。
しかし、トランプラリーが終了すると、相場の熱気も一気に冷め、急落を開始。同年6月7日には178.8円まで下落し、トランプラリーの上げ幅を帳消しにしました。今年に入ると、202.1円まで反発する場面もありましたが、振幅を繰り返しながら、徐々に水準を引き下げ、2018年11月には151.0円まで下落し、2016年9月以来の安値に沈んでいます。
米中貿易摩擦の影響
今年に入ってからのゴム相場の下げを見ると、夏から秋口にかけては160円台で下げ渋っていたのですが、10月中旬に崩れました。この背景として、今年のメインテーマとなっている米中貿易摩擦の激化、そして中国の景気減速観測が挙げられます。
両国の対立というのは、世界第一位と第二位の自動車市場を持つ国の対立であり、自動車産業のすそ野の広さから、多くの素材産業を巻き込みます。また、両国は、世界第一位と第二位の天然ゴム消費国でもあり、天然ゴムの世界消費の約40%が中国需要です。この両国の対立から景気が冷え込めば、天然ゴム相場の大きな圧迫要因となります。
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