混迷の時代 ゴールドに上値余地[佐藤りゅうじ]
佐藤りゅうじさんプロフィール
さとう・りゅうじ。1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー ドイサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。
公式サイト:佐藤りゅうじブログ
※この記事は、FX攻略.com2019年1月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
底入れ完了
ずいぶんと、きな臭い世の中になってきました。米中は覇権争いに突入、ブレグジットはいまだに結論を見ず、ヨーロッパでは極右政党の台頭が著しいです。アラブでは、これまで親米国家とされていたサウジアラビアと米国が、反体制派のカショギ記者の殺害をめぐって緊迫した事態となっています。
1989年の米ソ冷戦の終了、グローバルリズムの台頭、2008年以降の米国の弱体化による多極体制の中で、偏った所得分配が起こり、格差社会が醸成され、ポピュリズムや独裁的な支配体制が一部で確立してきました。
それでも世界的に景気が良いときは、何とかやり過ごしてきましたが、米国がお金の蛇口を閉めはじめ、来年には欧州中央銀行(ECB)も出口戦略に舵を切るとなると、これまで覆い隠されてきた不満や怒りが顔をのぞかせてきたということでしょう。
前書きが長くなってしまいましたが、ようは混迷の時代にようこそということです。市場の動きからも、それはうかがえます。ゴールドの値動きです。このところ、ドルは多くの通貨に対して上昇しています。しかし、ゴールドはドル高にあまり反応しなくなっています。また、10月にはNYダウは約600ドルもの急騰を演じる場面もありましたが、これに対する下げ幅も限られ、現在、1230~1240ドル付近で取引されています。8月16日に投げから1160ドルまで下げましたが、これが当面の安値になり、来年には1300ドル台回復もありそうです。
CFTC建玉明細(図①参照)を見ると、年初には投機家の買いポジションは、差し引き21万枚以上に膨らんでいました。ただ、その後は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しを背景に、米金利の上昇を受けて徐々に買いポジションが縮小し、8月14日時点では3688枚の売り越しに転じました。金の建玉明細が、ネットショートに転じたのは16年ぶりのことでした。金利上昇下で、金利のつかないゴールドが売られたのです。10月9日には、3万8175枚までネットショートは膨らみました。しかし、今回の米国とサウジアラビアの緊張を背景に、ポジションの巻き戻しが一気に起き、10月16日時点では1万7667枚の買い越しに転じました。ネットのポジションが5万5842枚もひっくり返ると、金の商品の特性としては、その方向にしばらく動くことが多いです。投機筋は、今後、金の買いポジションを増やしてくる可能性が高いとみます。
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