外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|200日線の傾きで主要通貨を検証。2018年は究極の膠着相場だった!】
2018年の為替相場を冷静に振り返ると、一番のキーファクターはトランプ大統領以上に「米国長期金利」でした。円、ドル、ユーロの3大通貨の値動きを見て驚くのは、200日移動平均線が真っ平なこと。大きな値動きがあったかのように見えて、実は膠着相場が続いていました。2018年の為替変動の要因を総括し、2019年の相場展望に役立てましょう。
※この記事は、FX攻略.com2019年1月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
米国長期金利の上昇に対する反応が今後のドル円相場に多大な影響を与える!
2018年の為替相場も11月23日の感謝祭を経て12月のクリスマスに至るまで、徐々に年末休暇を意識した閑散相場へと移行する時期になりました。
本原稿執筆時には、まだ11月6日に行われた米国中間選挙の結果が判明していません。トランプ大統領率いる共和党が勝利していれば、さらなる景気浮揚策の発動、保護主義政策に対する材料出尽くし感の台頭も見込まれ、ドル高が進む可能性が高いと思われます。逆に民主党勝利なら、トランプ政権がレームダック(死に体)化し、ドル安方向に振れているかもしれません。
未来を展望するためには過去の整理が必要です。そこで今回は2018年の為替相場の値動きを復習し、いったい、どんな要因が為替レートを動かしたのかをおさらいしていきます。
チャート①は、ドル円の2018年1月からの日足チャートです。ドル円は2月以降、米国長期金利の上昇、それにともなう株価の暴落、さらにはトランプ大統領による保護主義政策発動を受けて、1ドル113円台から104円台まで急落しました。しかし4月以降は、好調な企業業績など、活況を呈する米国経済が支援材料となり、年内都合3度に及ぶ米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げも好感され、一転上昇トレンド入り。10月中旬には115円台の年初来高値をつけました。
ところが、直後に米国長期金利が一時3.26%台まで急上昇したことで、それまで順調に買われていた株が逆回転。ほぼ同時に最高値を更新していた米国株の主要3指数が大きく売り込まれたことで、リスク回避の動きが強まり、安全通貨の円が買われ、ドル安が進みました。
2018年を振り返ってみると、ドル円の値動きのドライバーになったのは、トランプ大統領以上に「米国長期金利」でした。米国長期金利の上昇は、喉から手が出るほど「利回り」が欲しい日本の機関投資家たちのドル買いにつながり、ドル高円安が進む原動力になりました。しかし、長期金利が上昇しすぎると、絶好調の米国経済が金利上昇で失速するリスクが警戒され、最高値圏にある株価が暴落。つられて、為替市場でもリスクオフの円高が進む、という流れが、2018年のドル円相場を動かす大きな要因でした。
米国長期金利という「諸刃の剣」に対して株式や為替がどう反応するかは、2019年においても値動きの焦点になるのは間違いないところでしょう。
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