リスク山積み!先行き不透明な国際情勢[太田二郎]
太田二郎さんプロフィール
おおた・じろう。FXストラテジスト。1979年にザ・ファースト・ナショナル・バンク・オブ・ボストン東京支店にてFX取引を始める。後にマニュファクチャラーズ・ハノーバー・トラスト銀行、BHF銀行、ナショナル・ウエストミンスター銀行、ING銀行で法人向けの為替取引に従事、その後、リテールFXに従事し、米国のGFT東京支店で営業、後にマーケット・ストラテジストを経験、現在は個人投資家として活躍。
※この記事は、FX攻略.com20118年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
米中間選挙の攻防→前評判は共和党が劣勢
11月6日の米中間選挙まで残りわずか。9月24日付のWSJ紙によれば、WSJ紙とNBCニュース合同の与論調査では民主党主導の議会を求める登録有権者は52%、共和党主導は40%で前回よりも民主党のリードが拡大し、その差は2017年1月に共和党のトランプ大統領が就任して以来最大となったことを指摘しています。
一方、トランプ氏の支持率は44.0%と横ばいで安定推移し、経済に満足していると回答した有権者は69%で、前月の63%から上昇していることを考えれば、トランプ氏の経済政策が支持されていることは間違いなさそうです。
今回の中間選挙で争われるのは、下院435議席の全て、上院100議席のうち35議席、そして50州のうち36州の州知事職です。民主党が連邦議会で過半数を占め、トランプ大統領の政策実行に歯止めをかけるためには、「下院で23議席、上院で2議席」を確保する必要があります。中間選挙の結果によっては、トランプ氏の強引とも思われる政策運営に変化が生じる可能性もあり、為替相場にとっても重要であることは間違いありません。
米中貿易戦争の激化→勝利者はだれ?
国際通貨基金(IMF)は、米中の制裁関税と報復関税による影響で米中経済成長率が0.9%引き下げられるとの予想を示しています。世界経済は今のところ順調に成長を続けていますが、貿易戦争と呼ばれるようにいずれかが勝利を得るまで長期間続く可能性は否定できず、米中はもとより、米国と欧州連合(EU)、米国と日本を含め、今後の世界経済にとってより深刻な問題に発展するリスクも否定できません。
もっとも、トランプ氏は大統領選で掲げた公約を行動に移しているだけともいえます。選挙公約では、「人民元を不正に低く抑えている中国を為替操作国に認定し、対抗措置として輸入品に45%の関税をかける」と主張。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉でも「米国が有利になる条件に同意しなければ、協定から離脱する」と主張し、「TPPからの脱退」も表明していました。
ここで、直近の米中間制裁・報復関税の動きを振り返ってみたいと思います。
◎7月6日、米国は中国による知的財産侵害の制裁第1弾として、約340億ドル相当の輸入品に25%の追加関税を発動(同日、中国は340億ドル相当の報復関税を発動)。
◎8月23日、米国は中国による知的財産侵害の制裁第2弾として、約160億ドル相当の輸入品に25%の追加関税を発動(同日、中国は160億ドル相当の報復関税を発動)。
◎9月24日、米国は中国による知的財産侵害の制裁第3弾として、約2000億ドル相当の輸入品に10%の追加関税を発動(同日、中国は600億ドル相当の報復関税を発動)。
第1弾~第3弾の制裁関税の合計は約2500億ドルで、中国からの輸入額約5000億ドルのほぼ半分が対象となっています。トランプ大統領は年末には税率を25%に引き上げることを公言しており、中国の出方によってはさらに2670億ドル分の第4弾制裁関税発動を辞さない構えを既に示しています。これが仮に実施されるとすれば、米国は中国からの輸入品全てに制裁関税を課すことになり、中国の報復行動は必至で、世界経済への影響がより深刻になることは間違いありません。
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