過去最長、過去最高の言葉が躍る2018年 米株と米経済はピークアウトへ[安田佐和子]
安田佐和子さんプロフィール
やすだ・さわこ。三井物産戦略研究所北米担当研究員。世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移す。金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、ストリート・ウォッチャーの視点からニューヨークの不動産動向、商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信中。2011年からは総合情報サイト「My Big Apple NY」を立ち上げ、ニューヨークからみたアメリカの現状をリポートしている。
総合情報サイト:My Big Apple NY
※この記事は、FX攻略.com2018年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
好調な米株に支援され家計資産は過去最高に
リーマン・ショックから10年、今回の強気相場は8月22日に3453日目を迎え、1990年10月~2000年3月に記録した過去最長を更新しました。S&P500種指数が2009年3月9日に終値の最安値となる676ポイントをつけてから、約320%上昇した格好です。トランプ政権による追加関税発動やトルコリラ安を発火点としたリスク資産の下落でも、米株市場は優位性を維持。S&P500構成企業の売上に占める海外の割合が約3割に過ぎず、独DAX指数の構成企業の8割などと比較し、外部環境に耐性があるためでしょう。
好調な米株相場は、資産効果を通じ家計を支援しています。米連邦準備制度理事会(FRB)によれば、米1~3月期に家計・非営利団体の純資産は前期比1.0%増の100兆7683億ドルと、史上初の1兆ドルを突破しました。11期連続で統計開始以来の最高を塗り替えています。
家計の純資産の拡大に寄与したのは、金融資産(貯蓄、株式、投資信託、債券、年金、保険などを含む)で、同0.6%増の81兆7452億ドルと10期連続で増加すると共に、過去最高を更新しました。家計資産のうち金融資産は70・3%を占め、2014年1~3月期につけた統計開始以来で最高となる71.0%近くで推移しています。
内訳をみると、S&P500が米利上げ加速懸念などを受け1~3月期に一時10%安の下落局面を迎えた結果、株式は市場価値ベースで同1.5%減の29兆4024億ドル(直接、間接保有含む)と、前期の5.0%増から減少に反転、2015年7~9月期以来のマイナスに落ち込みました。しかし、金融資産における株式の割合は36.0%、総資産での割合も25.3%と、それぞれ2000年以降で最大を示した前期(36.7%、25.9%)からの小幅低下にとどまります。
トランプ政権による鉄鋼・アルミ追加関税や対中知財制裁関税などの発動にもかかわらず、S&P500は4~6月期に前期比2.9%高を示しており、同期の家計資産は株式を軸に再び過去最高を更新する見通しです。そうなれば、1980年以降のS&P500の上昇率と個人消費には相関性が見られることもあり、減税効果と合わせ国内総生産(GDP)の68%を担う個人消費拡大に期待が掛かります。
ゴールドマン・サックスも「米株高は2017年にGDPを0.6%ポイント押し上げ、成長1%増のうち3分の2が金融市場環境(米株のほか低金利、信用リスクプレミアムの縮小、軟調なドルなどを含む)によってもたらされた」と分析しています。
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