外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|貿易戦争リスクのある今、売りで儲ける技術も磨いておこう】
金利差や米国経済好調を背景にドル高が進む2018年の為替相場ですが、トランプ大統領の仕掛ける貿易戦争リスクは依然として“健在”。「上昇はじわじわ、下落は急激」という為替相場の法則を利用した短期の売り勝負もぜひ、FX投資の選択肢の一つとして意識しておきたいところです。定番のサポートライン割れ、レンジ相場の下限割れなど売りで使える売買手法を紹介します。
※この記事は、FX攻略.com2018年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
貿易戦争で円高リスク。ドカンと急落しやすいドル円の値動きグセを知っておく
夏の為替相場はドル高トレンドが鮮明になりました。その原動力はトランプ減税の効果もあり、米国経済が「一人勝ち」といって良いほど堅調なこと、政策金利が年内あと2回利上げされ、先進国では突出した2.5%台到達が視野に入ったこともあるでしょう。
市場では、需給面から見てドル不足だとか、貿易戦争がこれ以上悪化しないことがドル買い要因だとか、逆に貿易問題が深刻化すると日本の貿易黒字額が減り、それがドル売り圧力の後退になるなど、さまざまな「後講釈」がされていますが、なかなか決定的な説明になってはいないようです。
一方、ドル高トレンドが一変して、急速な円高が進むリスク要因としては、米中貿易戦争に終息の糸口がまったく見えないことがあります。米国は2000億ドル(約22兆円)規模の制裁関税を発表していますが、これは公聴会や一般からの意見を聞く作業があり、発動されるのは早くても9月の予定です。その先に控えるのが米国への輸入自動車及び部品に最大25%の関税をかける保護主義政策の発動です。
この問題を巡っては米自動車工業会も反対しており、そう簡単ではないのかもしれませんが、保護主義のターゲットが鉄鋼やアルミから自動車に移ると、さすがの日本も黙ってはいられません。日本政府は、米国が日本からの輸入自動車に制限措置を発動した場合、何らかの対抗措置を取る可能性を示唆しています。そうなると、これまで米中、米欧と「対岸の火事」だった貿易戦争が日本にも飛び火するリスクの台頭で、1ドル100円台を目指す円高が進む可能性もあります。
考えてみれば、ドル円はつい5か月前には104円台半ばで取引されていました。7月末時点で約9円もドル高が進んだことになり、いつ急落してもおかしくない状況です。そこで今回は、ここ最近の3大通貨の下げ局面にスポットを当て、急落、暴落相場の対処法を検証することにしましょう。
FXの値動きは「上昇はゆっくり時間をかけて、下落はドカンと短時間に」といわれるように、下げの勢いのほうが急激で大きなものになりがちです。
チャート①はドル円の今年7月下旬までの日足ですが、3月安値の1ドル104円台を底に、2018年前半は下落、後半は上昇と対照的な相場展開になっています。しかし、そのスピードを見ると、下げ相場では3日以上も大陰線が連発して、一方通行の下げが何度も発生。対して、4月以降の上げ相場は比較的じわじわと、踊り場型のレンジ相場を形成しながら、階段を上るように上昇する動きが続いています。
ドル円が「じわじわ上げてドカンと下げる」のはなにも今年に限った話ではなく、あらゆる相場で共通する値動きグセといっても過言ではありません。その背景には、やはりドル円を売買する主役が、日米金利差や米国への外貨投資を狙った日本の投資家であることが影響しています。彼らがドル円を買うときはあくまで「投資」ですから、むやみに高値を追うのではなく、「ドルが下がってお買い得になったら買いたい」という押し目買いの意識が強くなります。その後、思惑通り、ドル円の上昇が続くと、必ず一部投資家の利益確定売りが入りやすく、「一歩後退、二歩前進」というリズムでじわじわ上昇します。
一方、下落が急激で短時間なのは、ドル売り円買いが「いくらでもいいからとにかく売る」という成行の損切り注文になっているケースが多いからです。ドル円を売るのは、投資というより外貨に投資した資金を日本円に「換金」する動きといえます。ドルも円も同じお金なのでドル円買いは投資で、ドル円売りは換金、現金化というのも何か変な話ですが、日本円が絡む通貨ペアを動かしているのは、日本からの外貨投資であることが「じわじわ上げてドカンと下げる」値動きグセの原因と考えるのが妥当でしょう。
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