米国の中国「為替操作国」認定で貿易摩擦は為替政策の局面へ[江守哲氏メルマガより]
GogoJungleが提供している江守哲さんの投資メルマガ「江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー」より、今朝配信されたものからほんの一部をご紹介。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は上昇。米中貿易戦争に対する懸念がやや和らぐ中で円が売られ、106円台半ばに上昇した。米財務省は5日に中国を制裁対象となる「為替操作国」に認定したが、中国人民銀行は6日、取引開始の目安として示す人民元の対ドル基準値(中間値)を1ドル=6.9683元と、市場予想よりも元高水準に設定した。また、オフショア市場の香港で人民元建て債券300億元(42億5000万ドル)相当の発行計画を発表した。これを受けて、6日の上海外国為替市場の人民元相場が下げ止まった。そのため、米中両国の対立先鋭化への懸念が和 らぎ、これまで安全資産として買われてきた円が売りに押された。また、米国株が引けにかけて急伸したことや、前日に急低下した米長期金利が上昇したことも、円売り・ドル買いを促した。た。ユーロドルは1.12ドルを挟んだ水準で推移。一方、豪州準備銀行(RBA)は定例理事会を開き、政策金利を1.00%に据え置いた。前月まで2会合連続で0.25%ポイントずつ引き下げた効果を見極めるため、金融政策を維持した。据え置きは市場予想通り。ロウ総裁は声明で「必要に応じて金融政策をさらに緩和する」とし、追加利下げの可能性に 言及した。豪州では個人消費を中心に景気の先行きに不透明感が広がっており、市場では年内にさらに一段の利下げが行われるとの観測が広がっている。ロウ総裁は、「失業率の改善と低迷する物価の目標達成に向けて、低金利の長期化が必要」としている。
【通貨トレード戦略】
ドル円はショートを解消します。どうやら、間接的に介入が実施されたようです。真偽はわかりませんが、GPIFが外株・外債購入を通じて円売り・ドル買いが実施されたようです。こうなると、どうしようもありません。政府がそういうことを、公的資金を使ってやるということを理解したうえで、市場に対峙するしかありません。とはいえ、トレンドが崩れたわけではありません。しばらくはもみ合う可能性がありますので、少し様子を見たいと考えます。そのうえで、105.50円を割り込んできたところを売っていきたいと考えます。
ユーロが反発し始めており、ポンドも下げ渋っています。米国は中国の元安政策を断罪し、ドル安誘導を図りつつあります。こうなると、市場の動きがこれまでのような欧州通貨の下落一辺倒というわけではなくなりそうです。ドル安誘導はかなり効いてきます。無論、最終的には円高になります。したがって、このような「政治的な動き」を注視していく必要があります。繰り返すように、為替相場は政治で動きます。これを理解しておくことが肝要です。政策の方向性がかなりはっきりしてきました。安易に円安などを期待するようなことは避けるべき でしょう。
ドル円の下値がどの水準になるのかはわかりません。ひとつ材料があるとすれば、今年の円高の見通しである96円といえます。これは、過去30年のドル円の値動きから算出される可能性の高いと考えられる下値水準です。ここまで下げるかは不明ですが、トレンドが変わるまではとにかくショートを維持しながら、反発で手仕舞いする体制を整えておくことでしょう。8月は株安・円高になりやすい季節ですが、いまは政治的によほどの力が働かないかぎり、現在のトレンドが反転するのは難しいと考えておきたいところです。また、過去データもしっ かりと把握しておきたいところです。
トランプ政権は5日、中国が輸出競争力を高めるため人民元相場を安く誘導しているとして、制裁対象となる「為替操作国」に認定しました。為替操作国の認定は94年以来です。米中対立が通貨政策にも及んだ格好となっており、貿易摩擦の長期化は必至な情勢です。トランプ大統領は、中国からの輸入品全てに制裁関税を拡大する「第4弾」を9月に発動すると1日に表明しました。これを踏まえて中国当局は5日、人民元の対ドル相場が11年ぶりの安値水準である1ドル=7元の節目を下回ることを意図的に容認しました。中国が報復関税以外の「 禁じ手」に突き進んだことで、米中摩擦は新たな段階に入ったといえます。
一方、米国は、中国の為替操作国認定で貿易赤字問題と為替政策を明確に関連付けました。トランプ大統領は、中国や欧州が輸出に有利な通貨安を志向していると再三批判してきました。さらに、FRBに対抗策を講じるよう促し、結果的にFRBは7月に政策金利を引き下げました。FRBに対する利下げ要求がさらに強まるのは確実な情勢ですが、次の一手として為替市場介入によるドル安誘導に踏み切るとの臆測も浮上しています。米中に端を発する通貨安競争は、世界の市場を大きく揺さぶりかねない状況です。
貿易戦争の「一時休戦」を決めた6月末の米中首脳会談から1カ月たって、中国が合意を急がない待ちの姿勢に転換したとの指摘もあります。トランプ政権が終了するのを待って、次の政権と交渉する方針としたとの見方もあります。さらに中国商務省は、米農産品の購入を一時停止したと発表しました。来年の米大統領選を前に成果を急ぐトランプ大統領から譲歩を引き出すための交渉カードを温存したといえます。米中は先週に3カ月ぶりに閣僚級の貿易協議を再開しましたが、目立った進展はなく、9月上旬とみられる次回協議も予定通り行われる保 証はありません。まだまだ市場は不安定な動きになりそうです。
繰り返すように、8月は今年の第2の鬼門になりそうです。年初から、5月、8月、11月が今年の鬼門としてきましたが、まず5月に強烈な株安が来ました。次は8月です。すでに円高・株安の傾向が見え始めていますが、このままいまの基調が続くかを慎重かつ注意しながら見ていきたいと考えます。総仕上げは11月です。このときには、米国株にもリスクが高まっていると考えています。リスク資産の売却の動きに注意しておきたいところです。円高基調が鮮明になった場合には、年末まで最大で96円までの下げの可能性があるとみています。
あと、全く根拠があるわけではありませんが、8月は地震にも要注意でしょう。福島で地震がありました。何か嫌な予感がします。円高・株安にも直結するだけに、備えだけはしっかりとしておきたいと思います。
投資戦略対象の通貨ペアを変更します。新興国通貨は変動が激しいので外します。 主要通貨のペアを主体的に行うようにいたします。
対象は円、ユーロ、ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドルとします。
いまはカナダドルやNZドルが最強通貨になっています。
ドル円:なし
ユーロドル:なし
ポンドドル:ショート
豪ドル/米ドル:ショート
NZドル/米ドル:ショート
米ドル/カナダドル:ロングユーロ円:ショートを解消
ポンド円:ショート
豪ドル円:ショートを解消
NZドル円:ショート
カナダドル円:ショートを解消ユーロポンド:ロング
ユーロ豪ドル:ロング
ポンド豪ドル:なし
ユーロNZドル:ロング
ポンドNZドル:ショートを解消
ユーロカナダドル:新規でロング
ポンドカナダドル:ショート
豪ドルカナダドル:ショート
NZドルカナダドル:ショート
『江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー』(江守哲)より引用。
米国が中国を「為替操作国」認定したことで、米中貿易摩擦が通貨政策にも及んだことで局面の悪化・長期化は必至です。世界同時株安も進む中で、江守さんが述べられているように、今後の政治情報を確認して過去データをしっかり把握しておきましょう。(編集部)
独自の「グローバルマクロ戦略」分析をお届け
「江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー」メルマガ入手方法はこちら!
よろしいですか?