トランプ米大統領はドル安へと語気を強める。円高リスクには過去データの把握して対処を!
GogoJungleが提供している江守哲さんの投資メルマガ「江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー」より、今朝配信されたものをご紹介。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は下落。7月の中国貿易統計で輸出が予想外の増加となったことなどを受けて、米国株を中心に世界的に株価が上昇し、投資家らのリスク回避姿勢が後退したことから、安全資産としての円が売られる場面もあった。ただし、米30年債の低調な入札結果やイタリアの政局不安などをきっかけに米長期金利が低下に転じると、ドル円は106円台前半に下落した。ユーロドルは1.11ドル台後半に下落した。この日は中国人民銀行による人民元の対ドル基準値が、世界的な金融危機以降で初めて1ドル=7元を超える元安水準に設定されたものの、 市場予想と比べて元高方向となったことで、元の下落抑制に向けた当局のシグナルと受け止められ、これがポジティブ材料となった。ただし、オフショア人民元は7元を超える水準で推移している。
トランプ大統領は、「私が非常に強いドルを喜んでいると思うかもしれないが、そうではない!」とツイッターに投稿し、輸出に不利になるドル高をけん制。ドル安を促すため、FRBに大幅利下げを改めて迫っている。歴代米政権は、基軸通貨であるドルの相場安定を重視し、為替相場に関するコメントを控えてきた。トランプ大統領の発言は「強いドルは国益」との従来方針の否定と受け止められかねず、相場の不安定化を招く恐れがある。トランプ大統領は「他国と比べて高い金利水準がドル高にしている」と主張し、世界的な景気減速を警戒し、各国中銀が相次いで利下げをしている中で、米国の金利が相対的に高止まりしているため、米製造業が不利な立場に置かれていると不満を訴えている。
さらに「FRBによる大幅利下げと保有資産の圧縮による量的引き締めの中止で米企業が競争できるドルにすることが可能だ」と踏み込み、改めてFRBに大幅金融緩和を求める口先介入を行っている。トランプ大統領の利下げ圧力がエスカレートしており、市場ではFRBが7月末に続き、9月のFOMCでも利下げ決定を迫られるとの観測が広がっている。FRBは、金融引き締め効果のある保有資産の圧縮はすでに停止している。フェドウォッチでは、9月のFOMCでの0.25%ポイントの利下げは100%織り込まれている。
【通貨トレード戦略】
ドル円はショートを維持します。106.95円にストップを置きます。104.80円割れではさらにショートを積み増したいと考えます。トランプ大統領の執拗なドル安政策への圧力は、結果としてドル円の下げにつながる可能性が高そうです。欧州通貨に対してもその兆候が見られ始めています。基軸通貨であるドルを唯一発行できる米国が、ドル安を志向しているわけであり、これに対抗することはできません。日本政府による間接的な介入疑惑もありますが、やりすぎると米国からお仕置きがあるでしょう。つまり、きわめて強烈な円高圧力です 。無論、日米通商交渉にも多大な影響があるでしょう。円高リスクを甘く見ないほうが良いと考えています。
いずれにしても、8月は円高確率がきわめて高い月です。このデータを素直にとらえることが肝要です。円高になった際に、政府・日銀に対抗できる手札があるとは考えにくいでしょう。また、最終的には米国のスタンスが優先されます。日銀の追加緩和の可能性も否定できませんが、何ができるのか不明です。黒田総裁が突拍子もないことをやる可能性はありますが、これだけ海外の中銀が利下げを実行すれば、すでに十分に緩和策をとっている日本がこの利下げ競争に加わるのは難しいのではないかと考えられます。いずれにしても、いまは過去データを重視し、素直に対処したいと考えます。
ドル円の下値がどの水準になるのかはわかりません。ひとつ材料があるとすれば、今年の円高の見通しである96円といえます。これは、過去30年のドル円の値動きから算出される可能性の高いと考えられる下値水準です。ここまで下げるかは不明ですが、トレンドが変わるまではとにかくショートを維持しながら、反発で手仕舞いする体制を整えておくことでしょう。8月は株安・円高になりやすい季節ですが、いまは政治的によほどの力が働かないかぎり、現在のトレンドが反転するのは難しいと考えておきたいところです。また、過去データもしっかりと把握しておきたいところです。
繰り返すように、8月は今年の第2の鬼門になりそうです。年初から、5月、8月、11月が今年の鬼門としてきましたが、まず5月に強烈な株安が来ました。次は8月です。すでに円高・株安の傾向が見え始めていますが、このままいまの基調が続くかを慎重かつ注意しながら見ていきたいと考えます。総仕上げは11月です。このときには、米国株にもリスクが高まっていると考えています。リスク資産の売却の動きに注意しておきたいところです。円高基調が鮮明になった場合には、年末まで最大で96円までの下げの可能性があるとみています。 投資戦略対象の通貨ペアを変更します。
新興国通貨は変動が激しいので外します。 主要通貨のペアを主体的に行うようにいたします。対象は円、ユーロ、ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドルとします。 いまはカナダドルやNZドルが最強通貨になっています。
ドル円:ショート
ユーロドル:なし
ポンドドル:ショート
豪ドル/米ドル:ショートを解消
NZドル/米ドル:ショート米ドル/カナダドル:ロング
ユーロ円:なし
ポンド円:ショート
豪ドル円:ショートを解消
NZドル円:ショート
カナダドル円:ショートユーロポンド:ロング
ユーロ豪ドル:ロングを解消
ポンド豪ドル:ロングを解消
ユーロNZドル:ロングを解消
ポンドNZドル:ロングを解消ユーロカナダドル:ロング
ポンドカナダドル:ショート
豪ドルカナダドル:ショートを解消
NZドルカナダドル:ショート
『江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー』(江守哲)より引用。
トランプ米大統領の強烈なドル安圧力の中、Fedウオッチでは9月のFOMCで利下げを行う可能性を高いと見ているようです。一方の日本は円高に対する対抗手段がほぼ限られており、過去データを把握して対処していくことが重要とのことです。(編集部)
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