外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|2018年レンジ相場の対処法 スワップポイント狙いも視野に】
最初のインパクトは強いものの、結局、尻すぼみになりがちなトランプ氏の言動や政策のせいか、為替相場はドル円を筆頭に三角保ち合いやレンジ相場が続いています。少なくとも11月の米国議会の中間選挙までは膠着感の強い展開になりそうです。米国の政策金利のさらなる引き上げも視野に入れると、スワップポイントも狙ったレンジ相場向きの売買戦略が有効な時期といえるでしょう。
※この記事は、FX攻略.com2018年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
「最初にガツーンとやってから落とし所探し」のトランプ流レンジ相場に乗る
8月が近づいても、外国為替相場ではトランプ大統領の保護主義政策や対北朝鮮、対中東外交に大きな注目が集まっている、と思います。11月6日に迫った米国議会の中間選挙に向け、トランプ大統領は自らの熱狂的支持母体である米国保守層に受けの良い政策=為替市場など世界経済には受けが悪い政策を連発して、選挙を一気に有利に持っていきたいと考えているでしょう。
輸入自動車への関税導入などで、トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争は対中国だけでなく、対欧州にも戦線が拡大することになりました。「最初にガツーンとやってから落とし所を探る」のがトランプ流外交術です。為替相場においては、「最初のガツーン」でリスクオフの円高が進むものの、「落とし所」が何となく見えて事態が落ち着くと、再びリスクオンの円安に振れる展開が続いています。
米国の政策金利はいまや2%まで上昇し、さらに年内2度の引き上げが見込まれています。金利差から考えると、もっとドル買いが進んでもおかしくありません。しかし、「次、何をやるか分からない」という「トランプリスク」が根強くあるため、手放しのドル高にはつながっていません。
とはいえ、就任から2年近くが経過し、トランプ大統領の言動パターンに市場が慣れてきたのも事実です。「トランプ暴落」のような破壊的な事態は今後も想定しづらく、為替市場は少なくとも11月の米国中間選挙までレンジ相場で推移しそうです。そこで今回は、為替市場全体を色濃く覆う「レンジ相場」「三角保ち合い相場」でのFX投資術について考察してみましょう。
チャート①は、2015年5月に1ドル125円台の高値をつけて以降のドル円の週足チャートです。一言で言い表すなら、ドル円は為替レートの値動きするレンジが徐々に狭くなる「三角保ち合い相場」にあると表現するのが一番ふさわしいでしょう。
2015年5月高値125円台とトランプ相場の最高値である2016年12月の118円台を結んだレジスタンスラインAが強力な上値抵抗帯になっています。逆に下値支持帯は、当初は2016年9月安値100円台と2017年9月安値107円台を結んだサポートラインBでしたが、2018年2月にブレイクされました。しかし、急激な下落とはならず3月安値104円台で下げ止まり、今はその安値を起点にしたサポートラインCが下値支持帯となり、AとCに挟まれた三角保ち合いが続いています。
3月後半以降のドル円の戻りはレジスタンスラインAの突破を目指したものの失敗し、その下側で狭いレンジ相場を形成しています。すでにブレイクされたサポートラインBがドル円の上値を抑える壁に変化している点にも注目したいところです。
今後は、レジスタンスラインAを越えられずに再下落するか、Aを抜けて2017年のレンジ相場の上限ラインDやラインBの延長線が位置する1ドル114円台を突破できるかの攻防になっています。
全体的な流れからすると、今夏から秋にかけて再下落して1ドル100円を試す展開が濃厚にも見えます。しかし、現状でもドル円のスワップポイントは1万通貨あたり1日40円、年間では1万5000円に達しています。この金利差は魅力で、ドル円の強力な下支え要因になるでしょう。
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