これからの外国為替場の行方 第115回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2019年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
トランプ・マターな展開は先読み困難で投資家泣かせ
振り返ってみれば、この8月は久方ぶりにドル円の値動きが大きめとなった。というより、8月1日を境にして「レンジを一段切り下げた」とする方が、より実態に近い。6月と7月は、実に綺麗に107~109円のレンジに収まっていたわけだが、8月2日以降は105~107円のレンジへと切り下がった。ドル安・円高の要因は、言わずもがな、主に米中間における“覇権争い”の一層の泥沼化である。
少しおさらいしておくと、米国のトランプ大統領は、8月1日のNY時間帯に突然、対中制裁関税の「第4弾」を9月1日から発動するとの意向を示し、同月5日には米財務省が中国を「為替操作国」に指定した。これを受けて中国側が米国産農産品の輸入を一時的に停止すると発表するなど、双方の関係が悪化の一途をたどったことから、8月上旬のドル円は幾度か105円割れを試す動きを見せた。
ところがトランプ氏は8月13日、その舌の根が乾きもしないうちに、対中制裁関税の一部発動を先送りすると発表し、そこから一気に市場全体のムードは好転。ドル円は一旦107円台奪回に再びトライする動きを見せた。
さらに、そこから事態は二転三転し、同月23日には中国国務院がいきなり、対米報復措置を講じると発表。それだけでも十分に米10年債利回りを一段と低下させるだけのマイナス・インパクトではあったが、それに加えて中国の出方にブチ切れたトランプ氏の「我々に中国は必要ない」などというツイートや、米通商代表部(USTR)が対中制裁関税の税率引き上げを実施するとの報などが、ますますドル弱気の流れを増長することとなった。
結局、週明け26日のオセアニア時間はドル円が105円割れからのスタートとなり、一時は104.45円まで値を沈めることとなったが、ほどなくトランプ氏が「中国は米国との合意を強く望んでいる」と述べて貿易協議の進展に期待を示したことから、あらためてドル円は106円台に一旦値を戻すなどという、実に目まぐるしい展開となった。
要するに、このところの金融相場は、長らくトランプ氏がツイートする内容次第で大きく動く傾向を日増しに強めており、言わば“トランプ・マター”な相場展開ということになろう。
もちろん、それは多くの部分においてトランプ発言に過剰反応する「アルゴリズム取引」の為せる業であると思われるが、それが現実である以上は文句の言いようもない。その意味では実に先が読みにくく、投資家泣かせで、同時にコメンテーター泣かせ。加えて、目下はテクニカル・アナリストにとっても非常に取り組みにくい状況が続いていると言え、本来であれば大いに役立つシグナルがその役割を果たせないケースも少なくない。
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