島根銀行の弱みにつけこんだSBIの巧妙な提携戦略。地方銀行の再生に光は見えるか?
SBIホールディングス(8473)が島根銀行(7150)への出資を決定したことで、島根銀行の株価が急騰しました。
ネット証券最大手と地方銀行が資本・業務提携するというのは画期的な出来事です。一方で、それだけ地方銀行が窮地に陥っているということでもあります。
利ざやは低下し、貸出先もない
地方銀行は大変な苦境の時代を迎えています。
- マイナス金利
- 地方経済縮小
- キャッシュレス化
- 預金者の高齢化
- ・・・
特に、マイナス金利の影響は計り知れません。銀行のビジネスモデルは貸出金利と預金金利の差から収益をあげることですから、マイナス金利環境下では預金金利をマイナスにできない以上、「利ざや」は縮小の一途をたどるのです。
また、地方経済が縮小すれば、貸出先もなくなってしまいます。一部の優良企業に資金が殺到し、さらなる金利低下を招く悪循環に陥っているのです。
貸出先がないことは数字にも表れています。貸出金を預金で割った「預貸率」は近年低下の一途をたどっているのです。
貸出の利ざやとボリュームのどちらも取れないとなれば、銀行が取れる収益拡大策は以下のようなことに限られます。
- 有価証券の運用収益
- 投資信託等に販売による手数料
すなわち、銀行は「金貸し」以外に道を見いださなければならない状況なのです。
提携はSBIにとって「濡れ手に粟」
さて、ここでSBI証券と島根銀行提携のプレスリリースを読んでみましょう。
2.業務提携の内容
株式会社島根銀行との資本業務提携に関するお知らせ(SBIホールディングス)
(1)島根銀行のお客さまに対する当社グループの幅広い金融商品・サービスの提供
(2)当社グループの資産運用ノウハウやグローバルなネットワークから得られるファンド情報等の活用による、島根銀行の資金運用の高度化
(3)当社グループならびに当社グループ出資先企業等が有するテクノロジー等の活用を通じた、島根銀行の顧客利便性の拡充および営業コストの最適化 等
ここに書かれていることは、簡単に言えば「島根銀行の顧客にSBIの投信を売って、さらに島根銀行自身にも投信を売る」ということが何の臆面もなく書かれています。
確かにSBIにとっては有益な話です。これまでアクセスできなかったインターネットに馴染みの薄い顧客に対し、島根銀行を通じて商品を販売することができます。
また、島根銀行自身に対しても、貸出先がなくて余った資金で投信を買ってもらうことで、これまた手数料を得ることができます。
これらはいずれもノーリスクで行えるため、SBIにとっては濡れ手に粟の提携なわけです。
島根銀行はSBIの食い物にされる?
それでは、島根銀行にとってのメリットは何でしょうか。
投信販売のノウハウ獲得、自己資金運用の高度化という点では、なあなあで取り組んでいたこれまでよりは良くなる可能性があります。
一方で、預金しに来た高齢者に不必要な投資信託を売りつけてしまう可能性が否定できません。これはゆうちょ銀行でも似たような状況が見られます。
また、銀行も言われるがままにしていると、利回りが高くてもリスクの高い商品を売りつけられたりすることも十分に考えられます。
今回の提携で、島根銀行はSBIホールディングスの連結対象になっていません。すなわち、銀行の業績改善にまでコミットしているわけではないのです。
そもそもSBIに地域活性化や銀行経営のノウハウは期待できません。それでも地方銀行を傘下に収めようとするのは、資本が足りない弱みにつけこみ、自社商品の販売先を増やそうとしていると推測できます。
今回の提携は、あくまでSBIの営業戦略の一貫と考えたほうが良いでしょう。今後の地方銀行の再生に期待するのは時期尚早です。
よろしいですか?