外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|ドル全面高はどこまで続く?7月~9月の夏相場を読む】
米国の長期金利が3%の大台を突破。にもかかわらず株価は急落することなく上昇が続き、原油価格も上がっていました。為替市場でも金利高で景気に急ブレーキがかかり円高進行という懸念が消え、対ユーロ、対円を中心にドル全面高が続きました。7月~9月の夏相場は相場の転換点、分岐点になりやすい時期。今後の展開を「夏相場」「対ドル」をテーマに通貨ごとに見ていきましょう。
※この記事は、FX攻略.com2018年8月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
ドル高が鮮明になった春相場。値動きの転換点になりやすい7月~9月の夏相場の行方は?
為替市場では米国の長期金利上昇を背景に、春以降、ドル高が続いてきました。米国の10年物国債の金利は3%の大台を越え、2011年以来、約7年ぶりの水準まで上昇しています。
ただ、このまま金利高が続けば、住宅ローンや自動車ローンの金利がさらに上昇し、旺盛な米国の個人消費に水を差すことになりかねません。6月13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)も含め、年内にもう2~3回の利上げを予定している米連邦準備制度理事会(FRB)ですが、そろそろ政策金利引き上げが好景気に急ブレーキをかけるリスクも意識されるところで、慎重な判断を迫られる局面になりそうです。
ドル高で最もきつい下落に転じているのがユーロドルです。欧州GDPのマイナス成長やイタリアの政局不安もあり4月以降、急落。昨年来、ユーロドルは底打ち反転の上昇トレンドが続いていたこともあり、「今年はユーロの年」と予想していましたが、逆に「今年はドル高の年」という展開になりました。
通常、米国金利高は金利が高くなった米国債への資金流入を呼び込むため、株式市場からの資産流出につながります。今年2月には米国長期金利が3%近くまで上昇したことを嫌気して、NYダウが1日で1000ドルを超える大幅安となり、為替市場でもリスクオフの円高が進みました。しかし、今春は米国の金利高が素直にドル高(=ユーロ安、円安)につながり、NYダウも大暴落することはなく、株式市場の金利高に対する耐性が強まったと判断できそうです。
そんな中、毎年7月~9月の夏相場は乱高下や相場の転換点になることが多く、「サマーラリー」という言葉もあるようにリスクオンの円安トレンドが加速することも多い季節です。そこで、2006年以降のドル円の夏相場(7月~9月)をクローズアップしたのがチャート①になります。
チャートの薄い青の敷面で示した部分が、この12年間の7月~9月の動きですが、一見して夏相場が値動きの転換点になりやすいことが分かります。相場の山や谷、つまり値動きがトップアウトしたりボトムアウトしたりする相場逆転の前後やトレンド加速の起点になったのが06~08年や14~16年、底打ち確認が11、12年、トレンド休止が13年、トレンドの途中だったのが09、10年や昨年17年といった分類ができるかと思います。8月といえば夏休みで閑散相場になりやすいように思えますが、実際はかなり激しい値動きが起こっています。
欧米の機関投資家にとっては年末の11月、12月がクビやボーナスアップが決まる決算期です。彼らがもう一儲けを狙うせいか、何かと新たなトレンドや急速な値動きが起こりやすくなるのが9月以降の秋相場。そのための探り合いや前哨戦になりやすいのが夏相場といえるでしょう。
2015年や2016年のようなトレンド転換型で進むなら、春相場の上昇が今後も続き、一目均衡表の雲を完全に越える1ドル115円あたりに到達するような上昇トレンドに転換する可能性もあります。
一方、昨年2017年の夏同様に右肩下がりの下降トレンドの途中である場合、一目の雲が位置する112~113円で上昇が止まって、秋以降、再び1ドル100円の下値ターゲットに向けて下落するシナリオも考えられます。
Is it OK?