これからの外国為替場の行方 第98回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2018年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
米・日の政治絡みの材料にも自ずと賞味期限はある!?
執筆時の市場は、米・日両国で吹き荒れる政治不安の大嵐に翻弄され、かなりシビアにリスクオフの様相を色濃くしている。周知のとおり、米大統領は3月22日、中国による知的財産権の侵害を理由として、500億~600億ドル相当の同国製品に高関税を課す制裁措置を正式に表明した。
これに対して、中国商務省は翌23日、米国に対する対抗関税の準備をしていると発表。同省の報道官は「米国ができるだけ早く中国の懸念を解決し、対話と協議を通じて双方の違いを乗り越え、大局的な米中の協力関係を損なわないように促す」との談話を公表している。つまり、当面は“対話と協議”の行方が一つの鍵となるわけである。
とはいえ、ヘタをすれば両国がこのまま泥沼の貿易戦争に邁進しないとも限らない。その点を執筆時の市場は大いに警戒し、リスク回避的な行動を一段と強めているわけだが、本稿が読者の目に届く頃までには、また違った(全面戦争は回避する)方向性が見出されようとしている可能性も十分にある。よって、ここでいたずらに悲観論を展開することは厳に慎んでおきたい。
米大統領の“選挙(支持率アップ)目当て”は見え見えだが、一応は「ビジネスマンとしての鼻も利く」などと評されていることを考えれば、あまりにも粗暴な保護貿易主義を振りかざして、一段の株価急落や自国経済に及ぶ甚大なダメージ、結果として景気が腰折れしてしまうことなどを、手放しで見過ごすということもないのではないか。一方で、米国経済の成長度合いがようやく加速し始めてきていることも見逃せない。まして、そこに今後は大型減税を含めた大掛かりな財政出動の効果も上乗せされるというのである。
こうしたファンダメンタルズ要因というのは、市場が政治絡みの材料に対して特段の関心を寄せている間に限って一時的に表に出て来なくなることがある。確かに「米トランプ政権における主要幹部の辞任・解任ドミノ」などといったセンセーショナルな現象や「米中間における対立の構図」などという極めてインパクトの強い話題は、一時的にも投資判断の“口実”に利用されやすい。
しかし、そうした“ネタ”にも自ずと賞味期限はあり、いずれは本来のファンダメンタルズ要因に目線が向けられるようになるというのも世の常である。それは、執筆時に日本国内で執拗に取り沙汰されている「森友学園(への国有地払い下げに関する公文書の書き換え)問題」についても同様であろう。
足下の内閣支持率は所謂“危険水域”と言える水準にまで低下してきており、暫くは予断を許さない状況が続くと見られる。とはいえ、最終的にどのように事態が展開しようとも、日銀の金融政策が容易に方向転換できないということだけは動かしようのない事実なのである。結果、今後も米・日の金利差は開き続けることが見込まれ、ある程度の寄り道はあるにせよ、最終的にはドル高・円安の方向に向かいやすくなるものと筆者は個人的に見ている。
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