「アストロロジーの第一人者」山中康司 15000文字インタビュー「テクニカル分析のエキスパートが思う山勘と教科書と星の位置関係」
山中康司さんプロフィール
1982年慶応義塾大学卒業後、バンク・オブ・アメリカ入行。1983年から為替トレーディング業務に従事し、1989年バイスプレジデント。1993年プロプライエタリー・マネージャーとして債券、デリバティブ等の取引にも携わる。1997年日興コーディアル証券に移り、日興シティ信託銀行外為推進課長。1999年為替資金部次長として為替トレーティングとマーケティングを統括。2002年金融コンサルティング会社アセンダントを設立、取締役。
●聞き手:鹿内武蔵(編集部)
※この記事は、FX攻略.com2018年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
世界的なベストセラーをなぜ読まないのか
鹿内 山中さんは、テクニカル分析に精通しているイメージが大いにありますが、トレードをするにあたり、テクニカルとファンダメンタルズをどれくらいの比率で参考にするかを教えてください。
山中 トレードで、一番影響が大きいのは山勘です。
鹿内 え(笑)
山中 これは買いしかないだろう、売りしかないだろうという判断があった上で、トレードをすることが多いです。私は1982年から為替をやっていますが、長く関わっているうちに、これは上がるしかない、下がるしかない、という感覚が培われています。そういった感覚が、もしチャートに表れているのであれば、7〜8割がテクニカル分析ということになります。基本的にテクニカル分析は、全ての値動きはチャートの中に織り込まれているという考え方をしますよね。
一方、ファンダメンタルズ分析は、チャート分析以前の大前提、つまり相場観を固めるためにやはり必要です。2018年は3月上旬まで、ドル円は売りしかしていませんが、これにはファンダメンタルズ的な理由があります。米国の税制改革が一段落し、トランプ大統領の残っている公約を見ると、通商面の不均衡是正やメキシコ国境の壁設置あたりです。壁はまあどうでもいいテーマですので、貿易不均衡をどうするかしかないわけです。こうなると、ドル円は円高、つまり下がるしかありません。あとはチャートを見て、ここを抜けたら下がるな、という判断をしていきます。特に前の月の安値を抜けたら絶対売りですね。一度下げ止まったとしても、戻ったところでもう一度売りを入れれば、だいたい利益になります。
今年はこの戦略が機能しているわけですが、こういう大きなシナリオは数か月に一度立てるくらいです。それには、ファンダメンタルズ分析が必要ですね。ただ、個別の経済指標は気にしません。雇用統計も、今の情勢なら良い数字が出るに決まっています。単月で悪い数字が出て、瞬間的にドルが売られることがあっても、大きな流れには関係ありません。
鹿内 なるほど。このように、ファンダメンタルズも踏まえて決め打ちをしてしまうことが、冒頭でおっしゃっていた山勘ということなのでしょうか。
山中 そうですね。他の人から見たら山勘に見えるかもしれませんが、経験を踏まえた判断ということになります。
鹿内 移動平均線やオシレーター系指標など、テクニカル指標は使いますか?
山中 自分のトレードのためには見ません。何も表示されていないチャートの方が見やすいです。ただ、私ならここでトレードをするということを、セミナーなどで自分以外の人に伝えるときには、自分の感覚に近いテクニカル分析を用いて説明することはあります。基本的には直感でトレードしているわけですが、それだと説明のしようがないんです。
鹿内 経験に裏付けられた感覚というやつですね。
山中 そうですね。私自身が移動平均線なり、ボリンジャーバンドなり、RSIを使っているうちに、「こういう見方をすれば、初心者、中級者の方に私の経験を伝え、また経験を積んでもらうのに良いのではないか」という使い方が分かっていきました。
鹿内 普段はかなりシンプルな画面でトレードされているわけですね。
山中 そうですね。フィボナッチ・リトレースメント、フィボナッチ・エクスパンションは気にしています。どのあたりまで押す、戻るというのは大切なので。
鹿内 ニュアンス的になりますが、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の比率をあえていうならどれくらいになりますか。
山中 テクニカルが8、ファンダメンタルズが2ですね。テクニカル分析の比率が圧倒的に高いです。ただし、テクニカル分析が100%にはなりません。2018年は3月上旬までに44回トレードをしていますが、全部が売りなんですね。テクニカル分析のみで売買するなら、買いのトレードも混じってくるはずです。
鹿内 山中さんのような豊富な経験を積む前の個人投資家は、テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析とどのように付き合うべきでしょうか。
山中 比率でいえば1対1です。あまり先入観を持って一つのやり方にこだわりすぎず、いろいろなやり方を勉強した方が良いでしょう。ファンダメンタルズ分析も奥が深いですしね。
鹿内 なるほど。勉強になる本などあったら教えていただきたいです。
山中 NHK出版から出ている『投資家のための金融マーケット予測ハンドブック』が良いですよ。著者は、三井住友信託銀行マーケット事業です。大学の教科書みたいな本で、日本、米国、欧州と、ありとあらゆる金融政策が解説されています。これを知っておけば、ファンダメンタルズ分析ができるという内容になっています。だから私は、個人投資家の皆さんには、本当にFXを勉強するなら、この本を読んでくださいと勧めています。
銀行時代、いろいろなメディアさんから取材を申し込まれるわけです。そんなときは最初に、この本を読みました? と聞きます。20年以上前から出ている本ですからね。で、読んでないなら、まずは読んでから連絡くださいと伝えていました。
あとはテクニカル分析なら、ジョン・J・マーフィーが書いた『先物市場のテクニカル分析』。この本では、テクニカル分析の基本中の基本が解説されています。こういう教科書のような本を読みながら、分からない部分を調べたり考えていくことで、ファンダメンタルズ分析もテクニカル分析も、自然と身についていきます。
鹿内 FXを上達していくための、テキストそのものなんですね。ただ、こういった定番の解説書は、多くの方が読んでいないと思うんです。
山中 それならそういった方たちがどんな本を読んでいるかということなんですが、例えば書店に平積みされているFX本なんかは、出版社の営業があってその位置にあるわけです。そうではなくて、世界で一番読まれているテクニカル分析の本といえば、先ほど出てきたマーフィーの本と決まっています。米国のウォールストリートに行けば、この本が一番売れていますよ。チャート分析、テクニカル指標など、基本的な部分は全部押さえられています。これを超えるFX本はないかもしれませんし、もしあっても日本語訳はされていないでしょう。
鹿内 洋書も読まれますか?
山中 基本的に日本語の本はあまり読みません。情報量としては、圧倒的に英語が多いです。
鹿内 日本語訳されない本の方が多いですよね。
山中 私が英語で10年以上前に読んだことがある本が、話題の本としてようやく日本語訳されることもありますからね。
テクニカル分析は世界共通なわけですから、世界的なベストセラーはやっぱり読んだ方が良いと思います。ただ、テクニカル分析には絶対的な正解はありません。結局は儲けた者勝ちの世界ですから、最終的には自分なりの解釈、考え方が必要になります。そういった部分を構築するためにも、基礎やセオリーを知っていた方が良いですね。
鹿内 日本で出版される大半のFX本は、結局はそういった世界的なベストセラーの知識を土台にしているものも多いわけですから、それなら一次情報に触れた方が良いですよね。せっかく日本語になっているものもあるわけですし。
よろしいですか?