米雇用統計は過去の遺物に?[水上紀行]
米雇用統計は、為替相場を大きく動かす月1回のビッグイベントといわれており、プロ・アマ問わず世界中の投資家が注目する経済指標です。しかし、ここ最近は米雇用統計の様子に大きな変化が生じているようです。今回は米雇用統計の過去と現在について、水上紀行さんに考察してもらいます。
水上紀行さんプロフィール
みずかみ・のりゆき。バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年、上智大学経済学部卒業後、三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。5年間の支店業務を経て、ロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。東京外国為替市場で「三和の水上」の名で知られる。ドレスナー銀行にて、外国為替部長。1996年より RBS銀行にて、外国為替部長を経て、外為営業部長。2007年より バーニャ マーケット フォーカスト代表。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。
発表時に参加するのは投資家ではなく投機筋
原則として毎月、月初の金曜日に発表される米雇用統計は、ここ20年余りずっとマーケット全体で最注目の経済指標でした。それこそ米雇用統計発表当日は、世界中のディーリングルームにはディーラーたちが待機し、一種お祭りのような雰囲気がありました。それが、ここのところ様子が違ってきています。
最近の米雇用統計にリアルタイムで参加しているのは投機筋ばかりで、以前のような投資家の存在が皆無になってきているということです。投資家が参加すれば長期的な視野から相場を見ますが、投機筋ばかりですと短期の売買に集中するためトレンドは出にくく、むしろ短期の「往って来い」の相場になりがちです。
最近の投資家は一つの指標結果で結論を出すのではなく、複数の指標をしかも時系列的に見ることで方針を決めており、つまりは極めて慎重だといえます。そうなるとマーケットに残るのは投機筋ばかりとなるわけです。
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