「テクニカル分析の達人」平野朋之 8000文字インタビュー「FX本を読みあさり到達したテクニカル分析の魅力と限界」
平野朋之さんプロフィール
ひらのともゆき。米国の大学を卒業後、海外取引所関連の仕事に従事後、ひまわり証券へ入社。FX業務全般、自己売買部門でディーラー、投資情報室にてFX、日経225の情報発信、セミナー講師を務める。現在は独立して株式会社トレードタイムを設立。自己売買、投資教育、個人投資家支援を行いつつ、FX会社などへの情報発信やセミナーを精力的に開催中。
公式サイト:トレードプレス
Twitter:http://twitter.com/trade_time
●聞き手:鹿内武蔵(編集部)
五年も経過すればほとんどが続けていない
鹿内 最初から直球で質問をしますが、なぜFXで利益を出せない人が今も昔も多いのでしょうか。
平野 もちろんいろいろな要因はありますが、一つは飽きっぽい人が多いと思います。
私は自分の会社のサイトに、ある手法のトレード結果を毎日アップしているんですね。正直に本当のことを書いています。
鹿内 あ、それ見てます。
平野 どんなに良い手法でも、勝つときだけじゃなく、負けるときがあります。でも私は続けていけばその手法はお金が増えると分かっていますので、勝ってもそんなに喜びませんし、負けてもそんなに悔しがりません。約定メールが来たら一応確認はしますが、一喜一憂することはないです。
鹿内 それはやはり、検証をしてその手法が勝てるというデータ上の裏付けがあるからですか?
平野 そうですね。検証して優位性があると実証されているわけですから、あとは続けるだけです。良い手法なら、続ければいずれ結果は出ます。
運営サイトには日々の結果と共に、たまにこれまでの通算成績も出していますが、おおむね右肩上がりですよ。ただ、局面を切り取るとそれなりにお金が減っている時期もあります。そういう時期に直面すると、多くの人がそこで諦めたり、別の手法に鞍替えしたりと、一つのやり方を徹底できないんですよね。
鹿内 統計的にデータを蓄積し続けられないんですね。
平野 実際、運営サイトに利益が出たデータを載せると、アクセスはやっぱり増えます。逆に損が出たデータを載せると、あまり人は来ません。
鹿内 短期的な勝ち負けにこだわっている人が多いということでしょうか。
平野 そうかもしれませんね。
鹿内 平野さんは長く投資教育をされていますが、やはりお客さんで長続きする人は少ないですか?
平野 少ないですね。例えば最初に100人集まったとして、そのうちの三割くらいはとても熱心に勉強して、手法も試します。
鹿内 最初から三割ですか。
平野 でも、その人たちも、何年もたつとほとんど残っていません。もちろん、ちゃんと利益を出せるようになった、いわゆる卒業状態の人もいますが、それよりも中途半端な段階でやめてしまう人の方が多いです。
鹿内 根気強く続けられないんですね。
平野 さらにいうと、別々のスクールで同じような内容の講座をやることがあるんですね。そのとき、既に習っている人がいたら、同じ内容でまた授業料を払ってもらうのは申し訳ないので、事前にそれをしっかり伝えるようにしています。それでも受講する方はいるんですよね。
鹿内 ダイエットの本を私はたまに買うんですが、買って満足、特に行動はしません。これと似ているのかもしれませんね。
平野 あとは、エントリーから決済までのルールをしっかり説明しても、その通りに安定して実行できる人はあまりいません。やったりやらなかったり、あるいは特に根拠もなくルールを自己流に改造したり。
鹿内 このあたり、手法だけ手に入れても、簡単に利益を出せない理由の一つなのかもしれません。
あとは、長くルールを守り続けられない人の多くは、性急に結論を求めすぎているのかなと自分は感じます。今すぐ勝ちたい、みたいな。
平野 それもあるかもしれませんね。焦りすぎていて、本来その手法を運用するにあたり、当然のように発生する通常の連敗ですら耐えられないとか。
鹿内 勝率50%程度の手法の場合、平気で5連敗くらいはしますよね。
平野 以前の生徒さんの中に、FXオプションで一年間で資産を二倍にした人がいたんですよ。で、久しぶりにその人に電話をして近況を聞いてみたら、2017年末にそれまで出ていた利益を全部仮想通貨に投資していました。
鹿内 え、それって…。
平野 せっかく利益が出ているんだから、そのまま続ければ良いのに、と思いました。長くやっていてうまくいっているということは、統計的な優位性があるわけですから。
よろしいですか?