これからの外国為替場の行方 第120回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
新型ウイルス感染拡大でユーロ安からドル買いの動き
執筆時の市場は、新型コロナウイルスの話題で持ちきりとなっている。ウイルス感染拡大のニュースが報じられるごとに、リスクオフのムードが全体に色濃くなり、米・日を中心に世界の主要な株価指数が大きく値を下げる場面も目の当たりにされている。
むろん、ドル円が一気に下押す場面では、日本株の反応も大きくなりがちで、例えば1月27日の日経平均が一時500円超の下げとなったのは、同日の寄り前のオセアニア時間にドル円が窓を開けて大きく下押したことが大きいと思われる。
ただ、その割にドル円の下値がある程度限られた印象であることも確かである。それは、決してウイルス感染拡大の行方を楽観視しているわけではなく、リスク回避で円買いと同時にドル買いの動きが強まっていることによる。もちろん、中国との経済的関りが深く、ウイルス感染被害の影響が大いに危惧される欧州経済の先行き不透明感からユーロに売りが浴びせられているためで、結果として相対的にドルが強みを増していることもある。
実際、執筆時の「ドル指数」は昨年末を底に持ち直す動きを続けており、ウイルス感染拡大の報が伝わってきてからも高止まりした状態にある。執筆時点におけるユーロドルは、再び1.1000ドル処を意識した展開となっており、仮に同水準を下抜けると、下げの勢いが加速しやすいと見られる。
チャート①に見るように、足下のユーロドルは31週移動平均線(31週線)や62週移動平均線(62週線)が上値抵抗として意識されているうえ、一目均衡表の週足「雲」のプレッシャーも受けた状態にある。加えて、週足の「遅行線」が26週前の週足ローソクを上抜けられない状態も続いており、そう易々と上値余地を拡げられない格好となっている。
もちろん、ユーロ圏の景況感がなかなか改善してきていないことこそが、ユーロの上値を押さえる最大の元凶であることは言うまでもないだろう。
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