これからの外国為替場の行方 第122回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
ドル枯渇懸念の解消に一役買ったFRBの支援策
前回更新分の本欄でも触れたように、ことのはじまりは、一つに新型コロナウイルスの感染が2月下旬からイタリアや韓国などにまで拡がりはじめたとの報が伝わったところからであった。
チャート①であらためて確認されたいが、その後、ドル円は一時101円台前半の水準まで急落したものの、3月10日以降は一気に切り返して、再び112円台をうかがうほどの水準にまで値を戻すこととなる。
ちなみに、3月9日の急落というのは、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国との間における追加減産協議が決裂したことへの「一時的なショック」と「想定外の結果に対する失望」といったものが大きく作用した結果と見ていいだろう。その実、よく見れば同日以降は概ね104円台半ばあたりの水準が下値となっている。
それにしても、104円台半ばあたりから111円台後半の水準までの急上昇には、やはり目を見張るものがあった。既知のとおり、そのとき市場に蔓延したのは「ドル枯渇」の懸念である。当時の市場では「とにかく、何をおいてもドルキャッシュを手当てしておかねば」との思いから世界中のマネーがドルに殺到するような動きが急速に強まっていた。
それは、世界保健機関(WHO)が3月11日に「パンデミック(感染症の世界的な大流行)」を宣言したことが大きな要因の一つと考えていいだろう。それ以降は米国をはじめとする世界の株価や原油価格などが大幅下落したことに伴って巨額のマージン・コール(追証)が発生し、見る見るドルキャッシュの需要が高まることとなった。
なにしろ、世界情勢が大いに混乱した状況にあって、本来であれば「安全な資産の逃避先」として買われやすくなるはずの金(ゴールド)までもが、市場の現金化ニーズには抗しきれずに一旦は強く売り込まれたのである。
思えば、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月16日に緊急利下げ措置の実施と量的緩和の再開を発表したわけだが、それが日本時間の朝方という“異例の”時間帯であったことは、それ自体、FRBが一刻の猶予も許されない状況にあったことを物語っていると言える。
もっとも、FRBが打ち出した緊急利下げ等の措置に市場は十分な満足が得られず、その後も暫く混迷が続いた。そこで、やむにやまれず最終的に打ち出されたのが3月23日の「経済支援策第2弾」である。既知のとおり、それは「FRBが米国債と政府支援機関(GSE)保証付きの住宅ローン担保証券(MBS)を無制限に(必要なだけ)購入する」というものであり、さすがに同策のメッセージは市場に響いた。
言うなれば、必要な分だけありったけのドルを提供しようということなのであるから、それまであったドル枯渇懸念は一気に後退し、わかりやすくドル買い需要は低減した。結果、執筆時のドル円は200日移動平均線が位置するところまで一旦下押す展開となっている。
その一方で、3月23日と24日のNY金先物価格が2日間で1トロイオンスあたり176ドルもの値上がりとなった。これも一つの象徴的な出来事であったと言っていいだろう。
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