【無料全文公開】元為替ブローカーから学ぶFXの売買プランの作り方|第5回 値幅の半値ラインに着目したチャート分析法[浅野敏郎]
浅野敏郎さんが、自身の経験と知識に裏打ちされた売買手法や相場観構築のノウハウを余すところなく教えてくれる本企画も5回目を迎えました。今回は、一つの上昇波動や下落波動の半値ラインを意識したチャート分析のノウハウを解説してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
浅野敏郎さんプロフィール
あさの・としろう。東短グループの外国為替売買仲介業者である、トウキョウ フォレックス株式会社、さらには、為替取引の世界シェア80%以上を誇るEBS社(現ICAP)等での勤務経験を持ち、1985年のプラザ合意、その後の超円高時代、バブル崩壊、2000年のユーロ統合などの歴史的相場を第一線で経験し、相場観を養う。その後、2社のFX取引会社の創業、プライベートFXファンドのディーラーも経験。現在、投資の学校グループの日刊ブログで執筆を担当。特技の映像編集を活かした分りやすい映像作品の支持者も多い。
半値ラインは投資家に長い期間意識される
前号では重要な高値と安値を、そのまま水平に将来へと引いた線を、予測線として活用できることを解説しました。
少しだけ補足をすると、一つの波動、例えばチャート①でいえばH‐Iの高値と安値の半値(H‐I mid)を将来へ示しておくと良い場合があります。半値押し、半値戻しといった相場概念、あるいはフィボナッチでいうところの50%リトレースや一目均衡表など、半値に注目する考え方は定着しており、隠れたチャートポイントになるケースは結構あります。
このチャートで見える範囲で最も大きな下落波動は、B‐Gであることは明白です。B以降の高値は切り下がり、その間の安値はAを下回ったGが最大だからですが、このB‐Gの半値位置(B‐G mid)は、直近の波動になっているH‐Iの半値位置とおおむね一致し、ちょうど現在の相場の水準(2017年6月26日時点)である111円台とも一致していることが分かります。
一方、安値Gからの上昇が現在の相場に与える影響を見てみると、G‐Hの半値(G‐H mid)以上で推移できていることや、その半値水準は非常に重要な価格水準に見えるC・E・Iとおおむね同じであることからも、直近安値Iを割り込まない限りは底堅く推移しそうな状況に見えます。
つまり、現在の水準である111円台は、大きな下落B‐Gや直近の下落H‐Iから見て半値戻しの位置にあたることから、強弱の分岐点であることに加え、上昇のG‐Hから見てもH‐Iの半値押しから再び上昇を示唆できるか否かの分岐点にいるため、現在の相場が非常に神経質で方向性に欠けている可能性はあるでしょう。
過去のトレンドラインが機能する場合もある
価格線の他に、昔からオーソドックスなトレンドライン分析があります。最近のチャート分析ブームからは、取り残された印象もありますが、比較的長い期間の高値同士、安値同士を結んでできるトレンドラインもやはり、将来へ向けて半永久的に影響を及ぼすと、私は考えています。
一度ブレイクされたトレンドラインはその役目を終えたと見なされ、一般的には記憶から消し去られてしまいがちですが、次のチャート②をご覧いただければ、その効力が以降も継続していることは一目瞭然です。
例えば、高値HはFの影響に加えて、A‐Eのトレンドラインの延長線上で上値を抑えられたと見ることもできます。また、安値IはC‐Eの水平価格線に加えて、B‐Fのトレンドラインで下値を支えられ、D‐Fのトレンドラインを超えたことで上昇が加速したと見ることもできそうです。
つまり、高値や安値の価格分析と同様に、トレンドラインから相場が離れると直接的な影響が見えなくなるだけであって、その水準へと再び相場が戻れば、過去のトレンドラインがチャートポイントとして生きていることは少なくないのです。
今後の値動きは?
前号から引き継いだ大雑把な価格線の分析を日足で見てみると、現状はチャート③のような状況にあります。安値Iは大きな上昇G‐Hの半値水準(G‐H mid)と近いことから、IからJの半値水準③はI‐Jの上昇の分岐点であると同時に、Jからの下落の目先の限界点であるとも考えられます。つまり、③より上で推移できている現状は、G‐Hの上昇の影響が継続していると見て良いかもしれません。
ここまで絞り込めれば、あとはJ以降の下落がどこまで続くかに注目すれば良いことになります。安値④はJ以降の安値③を初めて切り上げたこともあり、目先は④の高値と⑤の安値をどちらに抜けるか、に注目することになります。ただし、その前には青い破線で示した重要な半値水準(B‐Gの半値やH‐Iの半値)があることから、上昇目線で相場を考える場合は、これらの水準を超える必要があります。そして超えた後の値動きとしては、111円台を底固めするようにもみ合うのか、あるいは112円台に乗せた際に上昇が加速するのか、に注目している状況です。
よろしいですか?