【無料全文公開】マックス岩本のフォーメーション分析を理解する その2
前号では、数あるフォーメーション分析の中でも、比較的に発生頻度の高いトライアングルフォーメーションについて学びました。それに続き、今回はトレンド反転型のリバーサルフォーメーション、および市場参加者の心理を読み解く極意をまとめてもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
ヘッドアンドショルダーズトップ
相場の継続的なトレンド(上昇or下落)を形成後の値動きには、大きく二つのパターンがあります。一つは、そのトレンドが反転するケース、もう一つはそのままトレンドが継続するケースです。前者は、天井や大底局面などのトレンドの終盤に現れるのに対して、後者はトレンド中盤の保ち合い局面に現れます。
このうち、前者のトレンド反転型のチャートパターンをリバーサルフォーメーションと呼び、後者のトレンド継続型のチャートパターンをコンティニュエーションフォーメーションと呼びます。
リバーサルフォーメーションには、ヘッドアンドショルダーズトップ(ボトム)、ダブルトップ(ボトム)、スパイクトップ(ボトム)などがあり、コンティニュエーションフォーメーションには、前回解説したトライアングルも含めて、ペナントやフラッグ、ウエッジなどがあります。
このように、一口にフォーメーションと言っても、それがどのパターンで、どこで確認されたかにより、その信憑性や後のトレードシナリオは大きく変わってくるため、注意が必要です。
今回は、リバーサルフォーメーションの代表格ともいえるヘッドアンドショルダーズトップ(ボトム)を解説していきます。このパターンは前述の通り、トレンドの終焉局面に訪れるチャートパターンです。
発生頻度は決して高くありませんが、トレンドの転換を示唆するチャートパターンである他、数あるパターンの中でも、ゆっくりと時間経過を伴って完成するため、トレンド転換後の価格の勢いには目を見張るものがあります。大きな利幅を狙えるチャンスでもありますので、ぜひ覚えておきましょう。
図①はヘッドアンドショルダーズトップの値動きのイメージです。時系列に解説していきます。高値Aを付けた後、反落して安値Bを付け、再び高値Cまで上昇しました。ここまでは、何の変哲もない上昇チャネルが形成された局面です。
ところが、その後は上昇トレンドラインに下支えられることなく、一気に水準を切り下げると、安値Dを経てEまで小幅反発してきました。トレンドライン分析の観点からは、明確に上昇トレンドの衰えを示唆する局面です。
しかしこの段階では、いまだ信憑性の高い方向性を見いだすことはできません。なぜならこの時点では、以下の三つのトレードシナリオが想定できるからです。①高値Cを突破する(中期上昇)、②高値Cの水準にてダブルトップとなる(短期上昇)、③高値Aの水準で失速し、再び安値Dを試しにいく(下落)。
ここで気を付けておきたい大事なことは「どれを選択するのが正しいのか」ということではありません。三つの選択肢があるということは、その分だけ市場参加者の見方も割れるということです。
具体的には、事前に上昇トレンドラインを割り込んだことに着目して「再び下落するだろう。売ろうかな」と考えるトレーダーがいる一方、安値Bと安値Dを付けたことに着目して「ダブルボトムを付けた。再び上昇するはずだ。買っていこう」と考えるトレーダーもいます。
ではさらに、事前にポジションを保有していたトレーダーたちは、何を思い、何を考え、チャートを見つめ続けるでしょうか。これも当然、どこに重きを置くかによって見方は割れるものと思います。そのため、このEの局面では売り方と買い方が拮抗することに伴って、方向感が乏しくなり、レンジ相場となることが少なくありません。
パターンが作られた市場心理を考えることが重要!
次に、一定期間保ち合った後に、三つ目のシナリオである「高値Aの水準で失速し、再び安値Dを試しにいく」が現実のものとなったとき、市場参加者の心理はどのように変化するでしょうか。
価格が再び下落し始めたわけですから、売り方が徐々に増えつつあることはチャート上からも明らかです。中には、安値Dを割り込むことをメインシナリオとし早仕掛けをするトレーダーや、事前に保有していた買いポジションを手仕舞うトレーダーも増えてくることでしょう。
そして、この動きは安値Bと安値Dを結んだネックラインを割り込む、つまりヘッドアンドショルダーズトップが完成することでさらに加速します。それまで買いポジションを持っていたトレーダーの損失確定の売り決済に加えて、これ以上は上昇しないと判断したトレーダーによる利益確定の売り決済。さらに、直近の安値更新を好機と捉えたトレーダーによる新規の売り注文などが一気に市場に雪崩れ込み、強い動意を伴なってヘッドアンドショルダーズトップは完成するのです。
なお、ネックラインを割ってからの下げ幅は、高値CーNL(ネックライン)の値幅が一つの目標値とされます。もちろん、必ず到達するということではありませんが、トレンドの強さを測る上では有用な目標値です(チャート①参照)。
今回はヘッドアンドショルダーズトップをメインに解説しましたが、いかがでしたでしたでしょうか。ヘッドアンドショルダーズボトムはその裏返しですから見方は同じです(図②参照)。こちらは発生頻度が低い分、それがチャート上に現れたときには注目を集め、多くの市場参加者の心理に影響を与えます。
ゆえに、単に「三つの山(谷)を付けたから」「ネックラインを割り込んだから」という一面的な見方ではなく、それが完成するまでのプロセスから、常に市場心理の変化を考えながらトレードすることが利益をモノにする秘訣です。
よろしいですか?