【無料全文公開】元為替ブローカーから学ぶFXの売買プランの作り方|第3回 トレンド相場でフォローすべきタイミング[浅野敏郎]
為替ブローカー出身の浅野敏郎さんが、自身の経験と知識に裏打ちされた売買手法や相場観構築のノウハウを余すところなく教えてくれる当企画。今回は、「トレンド相場でフォローすべきタイミング」について解説してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
浅野敏郎さんプロフィール
あさの・としろう。東短グループの外国為替売買仲介業者である、トウキョウ フォレックス株式会社、さらには、為替取引の世界シェア80%以上を誇るEBS社(現ICAP)等での勤務経験を持ち、1985年のプラザ合意、その後の超円高時代、バブル崩壊、2000年のユーロ統合などの歴史的相場を第一線で経験し、相場観を養う。その後、2社のFX取引会社の創業、プライベートFXファンドのディーラーも経験。現在、投資の学校グループの日刊ブログで執筆を担当。特技の映像編集を活かした分りやすい映像作品の支持者も多い。
トレンド相場でも入ってはいけないタイミングがある
早速、前号の最後に触れた、同じトレンド相場でも入って良いタイミングと悪いタイミングがある、という認識を深めて参ります。
あらゆる指標を駆使してトレンドをフォローしたにもかかわらず、買うと下がり、売ると上がるという経験は誰しもあるはずで、それが当面の高値や安値になる「高値つかみ」や「底値たたき」という最悪の結果に終わると精神的にも厳しいものです。後から見れば誰でも分かるトレンドの天底は所詮、結果論ともいわれますが、それでも可能な限り回避すべきです。
結果論にはなりますが、東日本大震災の年となる2011年終盤以降のドル円相場(チャート①参照)は、2011年10月末に75円中盤の最安値Aを付けてから、2015年6月に125円台終盤の最高値Bまで大きな上昇トレンドがありました。このレンジを天底だと今いうのは簡単ですが、いずれにしても上昇相場の最安値Aはトレンドの起点、最高値Bはトレンドの終点と認識できます。
「トレンドは永遠に続かない」といいますけれど…確かにそうですね(笑)。一つの波動を切り出せば必ずこうなるわけですが、このトレンドの値幅50円を100%とした場合、起点Aから相場が進むにつれて、残された上昇値幅は当然減っていきます。
トレンドの起点を捉え高値つかみを回避する
上昇相場で「高値つかみ」を回避するためには、例えば起点から80%進んだ115.00円以上の相場で新たに手を出さなければ良いのです。しかし、事前に高値は分からないため、上昇が強まると大抵は起点のことを忘れてつい手を出してしまい、「高値つかみ」の可能性を高めてしまうのです。
では、どうすれば良いかといえば、既に何度も繰り返しているように、トレンドの起点でエントリーできればベストです。さすがにピッタリ0%のAでは難しいとしても、せめて20%以内で開始できれば、少なくとも残り80%の値幅を手中にできるチャンスがあります。
とはいえ、やはり終点が事前に分からない以上は、この根拠もまた無いと同然ですから、ここはイメージだけでも共有できればと思います。
しかし、よく見てください。突然発生しているように見えるトレンドも、その前には必ずといって良いほど、赤丸で囲んだもみ合い相場があります。つまり、各もみ合い相場の終わりWは、同時にその後のトレンドの起点を意味しており、実はこの見極めが全てなのです。
これは起点Aだけに限らず、①から④までのもみ合いから、その後の値動き全てに当てはまります。ただし、一般的にいわれるような直近の高値越えでエントリーしては、手遅れになる場合も多く、そこからの伸びしろも少ないため、そのまま「高値つかみ」になりやすいことが分かります。
つまり、トレンドのなるべく序盤でエントリーを済まし、その後のトレンドにしたがって利益を伸ばし、トレンドの終盤では手仕舞いポイントを探すというプランこそが正しい方法なのです。
そう考えると、いわゆるトレンドフォローとは、エントリーのタイミングや手法を指しているとは考えにくく、この言葉こそが「高値つかみ」の元凶である可能性を指摘したいと思います。
あともう1点、皆さまを惑わす元凶を挙げるとすれば、トレンド相場のエントリーは「押し目買い」とする考え方です。高値をつかまないために、サポートラインや移動平均線までの調整下落で買うのが押し目買いですが、「上げ相場に押し目なし」といわれるように、本当に強い上昇相場では、押し目買いが叶うケースはほとんどなく、初めて買えたところがトレンドの終わり、という場合も多々ありますからご注意ください。
もみ合いを放れたところが狙い目に
おしまいに、トレンドが長く続いた後にしっかりもみ合った相場は、以前の方向を継続するにしても反転するにしても再びトレンドになりやすく、もみ合いを放れるタイミングWにのみ安全な入口があります。そして、そのまま直近の高値や安値を勢いよく越えれば、トレンドに乗れるチャンスが膨らみます。
もしトレンドの序盤を逃してしまった場合は、次のもみ合いを待つくらいの意識を持ち、勢いを増して進む相場は逆に見送るくらいの心構えが「高値つかみ」や「底値たたき」を回避する唯一の方法でしょう。
幸いなことに、もみ合い相場の終盤は、チャート上でも「足の塊」として認識しやすく、誰でも見つけやすいですから、ぜひ意識してみてください。今回例に挙げた相場は大きなトレンドでしたが、起点から④までを一つ一つ積み上げた結果論であることこそが事実です。
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