【無料全文公開】FXにおけるマネーマネジメント(資金管理)の考え方[遠藤寿保]
FXを長く続けていくためには、いわゆるマネーマネジメント(資金管理)が必要不可欠です。たとえ、トレードテクニックやテクニカル分析を身につけたとしても、このマネーマネジメントがきちんとできていなければ、いずれは相場から退場することになります。今回はマネーマネジメントの基本的な考え方を遠藤寿保さんにまとめてもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
遠藤寿保さんプロフィール
1998年、ひまわり証券で日本初となるFX事業チームに参加。2007年、FXZERO株式会社取締役を経て、現在YJFX!マーケティング部に所属。98年以降、投資家向けのコンテンツづくりやFXの企画等に携わった経験を生かし、FXエバンジェリストとして、情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。
発生する利益額 損失額を想定する
マネーマネジメントとは資金管理という意味で、FXなどにおいてはトータル損益をプラスにするため、トレードのルールや投資配分などを決めることです。今回は、このマネーマネジメントについて解説していきます。
FXにおけるマネーマネジメントで最初にやるべきことは、1回のトレードに必要な資金額や発生する損益金額の想定です。これは、トレードのスタイルや選択する通貨ペア、取引量によって変わってきます。
例えば、ドル円1万通貨のトレードの場合、最低必要な資金は証拠金として約4.5万円(2017年4月13日時点)です。トレードのスタイルをスイングトレード(トレード期間を1週間前後)とした場合、直近のドル円の値動きにおける週足ベースでの高値安値差は2.06円(※1)ですので、1万通貨トレードの場合は利益の可能性が2.06万円(1万通貨×2.06円)となります。
仮に2万円の損失を出してしまっても、次のチャンス1回で2万円の利益を上げればトータル収支はプラスマイナスゼロです。しかし、仮に4万円の損失を出してしまうと、それを取り戻すには理論上2週間で2回の利益を上げる必要があり、2万円の損失を出したときよりもリカバリーが難しくなります。
このことから、1万通貨でトレードを行った場合、1週間や2週間で100万円や1000万円といった利益を上げる確率は非常に低いということがお分かりいただけるでしょう。
※1 外貨exサービス2017年4月13日調べ
余裕を持った投資配分を考えてトレードする
FXにおいての投資配分とは、入金額に対して1回のトレード量をいくらにすれば良いのかということです。
例えば、入金額50万円の場合、ドル円1万通貨のトレードに必要な資金は4.5万円ですので、最大で11万通貨のトレードが可能となります。ただし、最初のトレードで損失を出した場合、次に11万通貨でトレードすることはできません。
当然、連続で損失を出す可能性もありますので、その場合でも以後同量のロット数でトレードができるように、あらかじめ複数回(3~4回)のトレードが可能な資金配分で取引することをお勧めします。
もし50万円入金の場合であれば、1回あたり4万通貨(必要証拠金18万円)以下ということになります。前述したように、ドル円における1週間の変動平均は約2円ですので、4万通貨でトレード(スイングトレード)を行った場合、3回連続で負けると約24万円の損失です。それでも残金は約26万円ありますので、4回目も4万通貨のトレードが可能となります。
しかし、5万通貨(必要証拠金22.5万円)でトレードを行った場合、3回連続で負けて約30万円の損失となると、残金は約20万円ですので4回目に5万通貨のトレードはできなくなります。
あくまで個人的見解になりますが、1回のトレードで使う資金は入金額に対して多くても30%前後という比率が良いのではないでしょうか。
もちろん、入金額全てを使ってトレードすることがいけないといっているわけではありませんが、FXは必ず利益を出せるものではないので、複数回トレードをするつもりで配分を考えた方が良いでしょう。
リスクリワードという考え方を持とう
FXは、24時間「何時」でも「何回」でもトレードが可能で、利益につなげるチャンスがたくさんあります。しかし、全てのトレードが利益につながるものではありません。
全てのトレードで利益を出そうとして、逆行時に放置することは大きな損失につながりやすく、回復するのにも時間がかかります。損失が発生した場合は、いち早く戦略の失敗を認め、次の戦略を立て直すことが重要だと思います。
また、利益と損失のバランスを表した「リスクリワード」を把握しておくことも重要です。例えば1回のトレードにおいて、利益額と損失額を同じにした場合は50%の勝率が損益分岐点となりますが、利益額2に対し損失額1と設定した場合は勝率40%、利益額3に対し損失額1と設定した場合は勝率30%が損益分岐となります(表①)。
このように利益と損失のバランスを考えルール化した場合は、勝率100%を目指す必要はないのです。全てのトレードを利益につなげなくても良いと割り切れば、各トレードに余裕ができるはずです。
最後に、FXのマネーマネジメントは特別難しいことではありません。トレードされる方の資金量やトレードスタイル、利益目標などさまざまだと思いますが、取引の仕組みをしっかりと理解した上で、直近のマーケットの動きから現実的な変動を想定計算し、無理のない独自のトレードルールを決めるだけです。
FXは100%利益が出る「打ち出の小づち」ではありません。また、発生する損失はトータルプラスにするためのトレードコストと考えることで、独自のマネーマネジメントを完成させることができると思います。
よろしいですか?