【無料全文公開】ボラティリティ(通貨ペアの値動きの変動率を示す変数)を把握しよう[遠藤寿保]
マーケットにおいて、価格が大きく変動すると「ボラティリティが高くリスクが高い」などと言われます。これはどのような状態のことを指しているのでしょうか? 今回は、この「ボラティリティ」について遠藤寿保さんに解説してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
遠藤寿保さんプロフィール
1998年、ひまわり証券で日本初となるFX事業チームに参加。2007年、FXZERO株式会社取締役を経て、現在YJFX!マーケティング部に所属。98年以降、投資家向けのコンテンツづくりやFXの企画等に携わった経験を生かし、FXエバンジェリストとして、情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。
ボラティリティとは何を指すか
マーケットにおけるボラティリティ(Volatility)とは、価格変動率のことを意味し、一般的にはヒストリカル・ボラティリティといって、過去の任意期間において、どれだけ価格が変動したかを指します。
ボラティリティが高いというのは、任意の期間、価格変動が大きかったことを意味し、ボラティリティが低いというのは、任意の期間、価格変動が小さかったことを意味します。また変動率とは、過去の変動価格を平均化し、標準偏差で分散具合を表したものとなります。
ボラティリティが高まる要因
ボラティリティが高まる要因としては、大きく二つ挙げられます。①はトレンドが発生し、新値を更新し続けるような場合。②は売り買いの大きな要因が入り混じり、乱高下する場合です。FXでトレードを行う場合、①の局面の方が利益を狙いやすく、逆に②の局面はトレードが難しいといわれます。
最近の例でいうと、昨年の英国国民投票(欧州連合[EU]離脱を国民に問う)や米国大統領選挙のときです。あの大きな価格変動に対処するのは、プロのトレーダーでも判断が難しかったのではないではないでしょうか。
通貨ペアを考察
FXは差金決済で利益を追求する特性があるので、ある程度ボラティリティがある方が望ましいとされています。FXでトレードできる通貨ペアによって、ボラティリティに差があります。
図①は、ドル円・ポンド円・ユーロ円・豪ドル円・ランド円の直近過去400本における、高値安値差を集計したデータです。例えば、ドル円とポンド円を比べてみると、ドル円は1日あたりの平均高値安値差が1.13円で、1週間あたりの平均高値安値差が2.06円。ポンド円は1日あたりの平均高値安値差が2.00円で、1週間あたりの平均高値安値差が3.89円となり、ポンド円の方がドル円よりボラティリティが高いといえます。
日足ベースで比較した場合は、ボラティリティが高い順に並べると、ポンド円・ユーロ円・ドル円・豪ドル円・ランド円となり、傾向としてボラティリティは通貨サイズ(価格の大きさ)と比例する場合が多いです。
仮にドル円が115円・ポンド円が140円とした場合、1%の変動がドル円では1.15円、ポンド円が1.40円となり、ポンド円はドル円より約0.2%大きく動くことになります。
単純に値幅の変動ということであれば、通貨サイズの大小がボラティリティの大きさに比例することになり、差金決済を目的としたFXで考えると、ポンド円が一番適している通貨ペアといえるのかもしれません。
変動率を可視化するボリンジャーバンド
チャートのテクニカル指標で、ボリンジャーバンドというものがあります。これをチャートに描画すると任意期間の相場の振れ幅(ボラティリティ)が標準偏差で示され、ボラティリティの変化を可視化することができます。
ボラティリティは、常に一定ではなく拡大と収縮を繰り返します。標準偏差はσ(シグマ)という記号を使い、統計学上、価格は±1σ(68.27%)、±2σ(95.45%)、±3σ(99.73%)の範囲内で変動する可能性があるといわれています。
ボリンジャーバンドが拡大するとボラティリティが高くなっていたことを表し、縮小するとボラティリティが低くなっていたことを表します。一般的にボリンジャーバンドは、ボラティリティの収縮を狙った逆張りや順張りで利用されます(図②参照)。
ボラティリティとリスクの関係
一般的に、ボラティリティが高い=ハイリスク、ボラティリティが低い=ローリスクと言われています。あくまで個人的見解ですが、ボラティリティが高いこと=ハイリスクとは言い切れないと思っています。
ボラティリティが高い場合、通常は流動性も高まっており、流動性が高まることで正常な取引が行われると考えます。流動性が高いということは、取引可能な価格が多数存在し、小刻みに約定が可能となります。逆にボラティリティが低い場合は、流動性も低下する場合が多く、価格変動が低下することから、決済ポイントまでに時間がかかる場合があります。
しかし、ボラティリティが高まり、急激に変動したときに、ネクストレート(次の約定価格)が大きく離れる場合があります。この場合、ストップオーダー(逆指値)やマージンカットが約定されるときに、不利なレートでの約定となり、想定外の損失が発生する可能性があります。
ボラティリティが高いということは、大きな利益を狙えるチャンスであると同時に、想定以上の損益を出す可能性もあるので、「諸刃の剣」と言えるのかもしれません。
よろしいですか?