これからの外国為替場の行方 第132回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2021年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
近頃のSPACの隆盛はバブル化の一つの証明?
2021年を迎えて、早々からビッグなサプライズが幾つか巻き起こった。一つは、米上院の2議席を争うジョージア州の決選投票(1月5日)において民主党が連勝し、同党が大統領と上下両院の過半数を占める「ブルーウエーブ」が実現したことである。
むろん、その可能性はゼロではなかったものの、どちらかと言えば上院は共和党が制し、上下両院で多数派が異なる「ねじれ」が生じる可能性の方が高いと思われていた。そして、その「ねじれ」が生じることを前提に、昨秋の米大統領選以降も米株価は上値追いの展開を続けていたのだ。
つまり、市場の事前の想定は覆ったわけであるが、それにも拘らず米株価は一段高を演じた。それが、第2のサプライズである。
今となっては珍しくもない「いいところ取り」ということなのだが、その背景に空前絶後と言えるほどの“カネ余り”があることは言を俟たない。
やはり、マネーのボリュームが肝心なのである。前回更新分の本欄でも触れているが、膨大なカネ余りは、常に行き場を探して彷徨っており、当然、株式市場や不動産市場にも次々に向かう。結果、其々の市場価格は高騰し、そのぶん更にカネ余りは増幅される。
これは、まさに「バブル」以外の何物でもない。近頃、米国市場で「特別買収目的会社(SPAC)」の新規上場が顕著に増加傾向を辿っていることも、その一つの証左であると言えよう。
SPACとは、未公開会社の買収を目的として設立される法人のことで、設立後に株式市場に上場し、市場から調達した資金を原資に未公開企業の買収を行う。企業を買収するまでは何ら事業を行っていない法人であることから、俗に「白地小切手会社」や「空箱」などと呼ばれたりもする。
こんな危なっかしい代物が平気で市場に認められ、そこに巨額の資金がつぎ込まれているというのは、やはり経済がバブル化していることの証である。
2000年代に米国住宅バブルが台頭したとき、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)を中心とした住宅ローンを裏付けとする資産担保証券(ABS)を元にして債務担保証券(CDO)なるものが次々と組成・販売され、これが後にバブル崩壊の引き金となった。この当時の状況と近頃のSPACの隆盛ぶりがよく似ていると思うのは筆者だけであろうか。
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