人工知能と相場とコンピューターと|第13回 21世紀の技術[奥村尚]
奥村尚さんプロフィール
おくむら・ひさし。1987年工学部修士課程修了。テーマはAI(人工知能)。日興証券で数々の数理モデルを開発。スタンフォード大学教授ウィリアム・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞受賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)。さらにイスラエルのモサド科学顧問とベンチャー企業を設立、AI技術を商用化し大手空港に導入するなど、金融とITの交点で実績多数。現在はアナリストレーティングをAI評価するモデル「MRA」、近将来のFXレートをAI推計する「FXeye」、リスクとリターンを表示するチャート分析「トワイライトゾーン」を提供。日本の金融リテラシーを高めるため、金融リテラシー塾を主催している。
趣味はオーディオと運動。エアロビック競技を15年前から始め、NACマスター部門シングル9連覇、2016年シニア2位、2014~2016年日本選手権千葉県代表、2017~2018年日本選手権 マスター3準優勝。スポーツ万能と発言するも実は「かなずち」であり、球技も苦手である。座右の銘は「どんな意思決定でも遅すぎることはない」。
ブログ:https://okumura-toushi.com/
※この記事は、FX攻略.com2021年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
画期的なプロダクトはこの先、生まれるのか
この連載で今まで言及してきた20世紀は、ハードウェアの時代でした。1940年代の真空管コンピュータからスーパーコンピュータに至る進化は、全ての産業が恩恵を受けています。月面着陸を成し遂げたアポロ11号(1969年)、音速旅客で欧米を結んだコンコルド(1975年)、再利用型の有人宇宙船スペースシャトル(1981年)のような宇宙技術、自動車(20世紀全般)、新幹線(1964年、画像①)、ジャンボジェット(1970年)、自動改札地下鉄(1969年)のような運輸技術、テフロン、ナイロン、カーボンファイバ、セラミックスなどの新素材、電子デバイスと歩調を合わせて進化した家電もありますね。
出典:リニア・鉄道館HP
こうした時代の中で、マンガや映画の世界ではAIとか知性を持ったロボットが登場し、21世紀初頭には私もそうした世界が実現すると思っていたものです。現実はそうでもなく、知性ロボットどころか、まともに走れるロボットすら登場していません。20世紀の乗り物は21世紀でも進歩がありません。新幹線も飛行機も自動車も、ハードウェアという観点では行きつくところまでたどり着き、大きな進化はできないように思えます。
そうした中、21世紀においては求められている技術や開発の主体は、20世紀のようなハードウェアの進化ではなく、人間のように振る舞うAIを活用した処理を実装し、安全に心地良く使うソフトウェアやサービスにフォーカスされてきています。
しかし、既に21世紀になって20年が経過したにもかかわらず、画期的なプロダクトはありません。インターネットの発達によって時間や移動の価値観は変わりましたが、これは行動の変革であり、技術的には30年前からあったものです。「鉄腕アトム」のようなAIロボット、「2001年宇宙の旅」のような考えるコンピュータは遠のいています。スローペースです。人類の脳を模倣するのは、まだまだ難しいということでしょう。
よろしいですか?