[インジケータ・統計] MAクロスに有効性はあるのか?①
こんにちは。2payです。
今回も小話シリーズです。
商品開発を進めたいのですが、気が乗らないので遊んで(検証)いこうと思います。
改めて、今回のテーマは「MAのゴールデンクロス・デッドクロスの有効性」に関してです。
裁量やサインインジケータ、EAの制作等、ジャンルを問わずMAは非常に幅広く使われていると思います。
その使い方の1つとして、ゴールデンクロス・デッドクロスがあります。
今回こんなテーマを掲げたのは、普段MAを取り入れるEAを試作してみてもどれも結果がいまいち奮わないことに疑問を抱えていたからです。
数年前から現在に至るまで、試作品から完成品までクオリティの差はありますが、MAクロスをロジックに組み込んだEAは50種くらい作りました。
それだけ作っても良いものが全然作れない事と、変数が変わると傾向に大きなバラつきが出ることが疑問の核心になります。
その原因を今回の検証で詳らかにし、今後のEA制作に役立てていこうと思います。
今回の検証事項は以下の通りです。
①MAのGC・DC確定後、翌足が陽線/陰線になった本数および、値幅を集計する。
②MAのパラメータや、組み合わせ、通貨を変えて、同様に集計する。
早速1つ目から参ります。
①MAのGC・DC確定後、翌足が陽線/陰線になった本数および、値幅を集計する。
今回集計のモデルに使用するのは、USDJPY H1 です。
集計期間は、2014.08.15 - 2020.12.31 です。
集計範囲はなんでも良いのですが、期間の開始位置と終了位置で殆ど価格差がない(横ばい)という理由で上記期間を設定しています。
もし集計期間が過度に上昇していればGCには有利で、DCには不利に働くはずです。あくまでフラットに集計を行います。
今回集計に使用するインジケータは、以前正規分布と実値を比較するために使用したものを改造します。
MAのメジャーな期間が分からないので手始めにSMA(10)とSMA(25)のクロスを集計します。(MAの適用価格は終値)
大抵はクロスが確定した翌足の寄り付きからエントリーすると思うので、クロス確定の翌足が陽線/陰線になった数および、それぞれの値幅合計量を集計します。
その前に、クロスが確定した当足の分布を確認してみましょう。
上昇した回数(本数):651本 値幅合計:7931.4 pips
下降した回数(本数):168本 値幅合計:-705.3 pips
ヒストグラムが3pips単位でカウントした分布(本数)で、プラスが陽線、マイナスが陰線を示します。
折れ線グラフは標準偏差(偏りが無ければ理論上は折れ線のように分布する※1)です。
※1 理論上の話であり、実際の分布と状況が少し異なる事は以前説明した通りです。大まかな標準的分布のモデルとして置いています。
GCが確定した足なので、大概陽線になっているものと思います。
それを裏付けるように、上昇した回数が圧倒的に多く、標準偏差グラフより右側(陽線側)に分布が傾いています。
視覚的にも圧倒的に陽線に偏っている事が確認できます。
ただし実際にエントリーが可能になるのは、上記の事象が確認できた後になります。
ということで、クロス確定の翌足を見ていきましょう。
上昇した回数(本数):419本 値幅合計:3497.2 pips
下降した回数(本数):401本 値幅合計:-2788.9 pips
(寄り引け同時の場合はカウントから外しています)
いかがでしょう。想像通りですか?
純益 708.3 pips、勝率にして 51.1%、PFは 1.25 です。
手数料計算を行っていないので、簡易的に行います。
スプレッド 0.3pips(国内基準)なら
(419+401)*0.3 = 246 pips
708.3-246 = 462.3 pips です。
次にこれを集計期間(76.5カ月)で割って平均月利を出します。
462.3/76.5 = 6 pips
集計期間においては ひと月 平均6pipsの利益を生むことに成功しました。
誰か回したい人はいますか?
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先ほどはローソク1本分の集計だったので、充分な値幅が取れなかったはずです。ということでエントリー足からさらにもう1本先まで(合計2本)保有した場合の集計を行います。
上昇した回数(本数):427本 値幅合計:4604.5 pips
下降した回数(本数):394本 値幅合計:-3940.8 pips
純益 663.7 pips、勝率 52.0%、PFは 1.17 です。
ひと月の平均利益は5.5 pipsです。
レバ1でキャリーしている方が稼げます。
ちなみに以前、両端が伸びているのは優位性であると説明しましたが、今回の集計は陽線か陰線か、および上昇の合計・下降の合計を取得する趣旨のため、図に示した赤枠vs青枠で勝敗を見ていると思ってください。
赤枠内の本数が394本、合計値幅が-3940.8 pips であるのに対し、青枠内の本数が427本、合計値幅が4604.5 pips という構図です。
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数を飛ばして、エントリーから10本保有した場合の集計をしてみましょう。(画像は割愛します)
上昇した回数(本数):418本 値幅合計:10527.2 pips
下降した回数(本数):404本 値幅合計:-9542.7 pips
純益 984.5 pips、勝率 50.9%、PFは 1.10 です。
ひと月の平均利益は9.6 pipsです。少し改善しました。
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最後に25本保有したパターンを集計します。
上昇した回数(本数):429本 値幅合計:18357.4 pips
下降した回数(本数):395本 値幅合計:-16813.9 pips
純益 1543.5 pips、勝率 52.1%、PFは 1.10 です。
ひと月の平均利益は16.9 pipsです。初めよりだいぶマシになりました。
でも実用性を考えると、ひと月の平均利益は2桁後半~3桁pips 欲しいところです。
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ゴールデンクロスはこの辺にしてデッドクロスを集計します。
最初は翌足1本の集計結果です。
上昇した回数(本数):427本 値幅合計:3175.1 pips
下降した回数(本数):392本 値幅合計:-3616.5 pips
純益 441.4 pips、勝率 48.3%、PFは 1.14 です。
ひと月の平均利益は2.6 pipsです。かなり厳しい結果です。
ちなみにスプレッドが0.6pips以上になると手数料負けします。
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こちらも飛ばして10本保有時の集計結果になります。
上昇した回数(本数):416本 値幅合計:9524.0 pips
下降した回数(本数):407本 値幅合計:-10193.5 pips
純益 669.5 pips、勝率 49.5%、PFは 1.07 です。
ひと月の平均利益は3.2 pipsです。
1本の集計に引き続き、勝率が50%を割り込んでいます。
この期間は短い陽線が多めに発生していたのでしょうか。
ただしもみ合い期間のため、値幅でつり合いが取れているようです。
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最後に25本保有時の集計結果になります。
上昇した回数(本数):443本 値幅合計:17528.4 pips
下降した回数(本数):379本 値幅合計:-16426.6 pips
純益 -1101.8 pips、勝率 46.1%、PFは 0.94 です。
ひと月の平均利益は-17.6 pipsです。
ついに損失が出ました。
これは偶然なのでしょうか?
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②MAのパラメータや、組み合わせ、通貨を変えて、同様に集計する。
GCとDCを両方実施すると手間なので、結果の悪かったDCでテストします。
もしDCで良い結果が得られたならば、GCも含め総合的に良い結果であると評価できるのではないでしょうか。
まずは期間を短くして試します。
SMA(5)とSMA(10)を用意しました。先ほどとは期間の比率も変わっています。
これのDC確定後、翌足1本の結果を示します。
上昇した回数(本数):1049本 値幅合計:7623.7 pips
下降した回数(本数):882本 値幅合計:-7824.8 pips
(勝率等の算出も割愛します)
本数、値幅、共に上昇に負けています。
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DC翌足から10本保有した場合の結果です。
上昇した回数(本数):1002本 値幅合計:24121.0 pips
下降した回数(本数):937本 値幅合計:-25002.0 pips
相変わらずの勝率ですが、わずかに利益が出ています。
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続いて、長期のMAを使用します。
SMA(50)とSMA(200)を用意しました。
DC翌足1本保有した場合の結果です。
上昇した回数(本数):71本 値幅合計:510.0 pips
下降した回数(本数):70本 値幅合計:-502.7 pips
本数、値幅、共に上昇に負けています。
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DC翌足から10本保有した場合の結果です。
上昇した回数(本数):67本 値幅合計:1885.7 pips
下降した回数(本数):74本 値幅合計:-1749.0 pips
今度は勝率が50.0%を上回り、損益でマイナスになりました。
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長期MAなので、DC翌足から50本保有した場合の結果も取りました。
上昇した回数(本数):75本 値幅合計:3718.8 pips
下降した回数(本数):66本 値幅合計:-4183.0 pips
10本の時とは反対に、損益がプラスになりました。
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DC翌足から200本保有した場合はどうでしょうか。
上昇した回数(本数):80本 値幅合計:8779.4 pips
下降した回数(本数):61本 値幅合計:-8111.0 pips
また勝率、損益ともに負けました。
制作したEAのパフォーマンスにバラつきが出る感覚は伝わったでしょうか?
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同MA設定で、H4で集計します。
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):21本 値幅合計:2689.7 pips
下降した回数(本数):25本 値幅合計:-2828.8 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):27本 値幅合計:6244.3 pips
下降した回数(本数):18本 値幅合計:-4051.1 pips
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さらに同MA設定で、他の通貨にも適用してみます。
・GOLD H1 (2022.03.09 - 2023.11.21)
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):14本 値幅合計:1811.1 pips
下降した回数(本数):14本 値幅合計:-2310.9 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):11本 値幅合計:4631.2 pips
下降した回数(本数):17本 値幅合計:-6961.6 pips
・GOLD H4
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):2本 値幅合計:92.9 pips
下降した回数(本数):4本 値幅合計:-1507.7 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):2本 値幅合計:1460.2 pips
下降した回数(本数):4本 値幅合計:-1515.3 pips
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・BTCUSD H1 (2021.11.14 - 2024.03.10)
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):24本 値幅合計:166471.8 pips
下降した回数(本数):25本 値幅合計:-216969.3 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):22本 値幅合計:351464.3 pips
下降した回数(本数):27本 値幅合計:-625778.7 pips
・BTCUSD H4
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):8本 値幅合計:71997.8 pips
下降した回数(本数):5本 値幅合計:-92454.8 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):7本 値幅合計:325725.0 pips
下降した回数(本数):6本 値幅合計:-325896.3 pips
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・US500 H1 (2021.12.26 - 2023.12.17)
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):19本 値幅合計:13037.8 pips
下降した回数(本数):14本 値幅合計:-9702.7 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):15本 値幅合計:16401.7 pips
下降した回数(本数):18本 値幅合計:-21834.7 pips
・US500 H4
DC翌足から50本保有した場合。
上昇した回数(本数):3本 値幅合計:2381.2 pips
下降した回数(本数):4本 値幅合計:-6113.9 pips
DC翌足から200本保有した場合。
上昇した回数(本数):2本 値幅合計:4465.2 pips
下降した回数(本数):5本 値幅合計:-9544.3 pips
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なかなか良いサンプリング期間が見つからず、サンプル数が少ないため、これをデータ全体の総意とは捉えないように、あくまで参考値としてみてください。
SMAの他にもEMAを試しましたが、大体同様の結果に落ち着きました。
これはもしかすると為替には不向きなだけで、他所のカテゴリでは通用するということなのでしょうか?
一例を挙げると、OさんとAさんが創設した某ブローカーのMA解説ページで、DCが発生すると「価格が下落しやすく、売りサインとなる」と明記されています。
クロス後の傾向に関して言及しているサイトと言及されていないサイトが混在していることが調べて分かりましたが、上昇/下降しやすくなるという話は検証を行った上で語っているのかは気になるところです。
今回のお話はここまでになります。
横ばい期間での集計を今回行いましたが、実践となれば全ての期間を対象に考える必要があるため、次回EAを作成して検証してみようと思います。
読んで頂きありがとうございました。
Is it OK?