[インジケータ・統計] MAクロスに有効性はあるのか?②
こんにちは。2payです。
前回に引き続き、MAクロスの検証を行います。
前回は価格動向がフラットな集計期間において、MAクロスの有効性について検証しました。
今回は上昇/下降トレンドも含めたあらゆる場面で機能するかどうかを確認したいと思います。
人によっては非常にショックな内容になると思います。
今回はより実用的な検証ができるように、EAを用意します。
ロジックはシンプルに、SMA(50)とSMA(200)のGC/DC確定でエントリー(0.01 lot)、50本後に決済 (時間到達による決済) というものになります。
今回はクロスエントリーの効果測定が目的の為、反対のクロスで途転決済させません。
前回インジケータで検証した内容のままです。
buyとsellは同時に組み込んで検証します。
資産成長曲線のムラもわかるように、計測期間は長めに取得します。
スプレッドは 0.1 pipsなので、殆ど純粋な結果が反映されるはずです。
それでは早速検証を行っていきます。
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USDJPY H1 (2003.01.01 - 2025.02.28)
取引回数が検証時より少ないのは、buy/sellポジションの最大保有数をそれぞれ1つまでに制限しているからです。
以下に保有時間のグラフを示します。H1の50本保有=2日+2時間 なので、そこそこ長期保有になっていると思います。
50時間ピッタリで決済されていないのは、土日を挟んだポジション等です。
(50時間ではなく、50本後で条件設定しました)
この結果を信じられない人、いますよね。
普段使用してきたMAのポテンシャルはこんなものでは無いと。
MAのゴールデンクロスは上昇トレンドでこそ輝くのだと。
それでは上昇トレンド期間に限定し、ショートロジックを外し、ロングロジックだけ残した状態でテストします。
以下は取引結果です。(2012.01.01 - 2025.02.28) ←上昇トレンド期間
ショートの取引回数は確かに0回でロングだけ実行されており、勝率、平均RRともに下回っています。
さらに付け加えると、純益-9549円 の中に スワップ+6200円が加算されています。
スワップ抜き (≒純粋な値幅による成績) なら純益は -15749円となります。 完全敗北ですね。
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先ほどの検証だけでは、時間決済にしたことが問題だと指摘する声が聞こえてきそうなので、今度は値幅で決済させてみます。
エントリー価格より上下20.0pipsにTP・SLをそれぞれ設置し、時間決済条件を外します。
これにより純粋に値幅到達だけで勝敗が決まります。
初めの期間(2003 - 2025)に戻し再度テストします。
結果は芳しくありませんね。
他の条件ならどうか?という意見もあると思います。
1つ1つ検証するのが大変なので、条件をガラッと変えます。(手間を惜しんですいません)
EMA(10)とEMA(25)を使用。
SL・TPを10.0pipsに設定。
テスト通貨:EURUSD M15 (2003.01.01 - 2025.02.28)
以下、テスト結果です。
これまでの流れから想像できる結果ですよね。
本当はGOLDやBTCも取りたいところですが、充分なヒストリカルデータを持っていない事を理由に今回は検証しません。
同様の結果に落ち着くことだけ伝えておきます。
気になる場合は各自の環境でご確認ください。
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大体データが揃ったのでまとめます。
・時間到達、値幅到達に関わらず、最終的なスコアはマイナスだった。
・資産成長曲線が大きく乱れており、年間・月間別で見られる傾向は無かった。
・トレンド方向に合わせて取引してもマイナスになる結果となった。
成長曲線の乱れから、クロスエントリーには固有の傾向が存在しない(=優位性が無い)事が分かります。
前回の検証で、足の分布グラフを見た通り分布に偏りが無く、全ての足を集計した時(ランダムウォーク章にて解説) と同じような配分になっていたことを確認しました。
これは、クロス確定の翌足が通常時と変わらない確率で陽線や陰線、寄り引け同時線が発生することを意味します。
結論として、クロスエントリーには優位性が認められなかったことが分かりました。
私とすれば具体的な数字によってMAクロスの有効性の否定が確認できて良かったです。
MAクロスでエントリーしていた人にとってはショックな内容だったのではないでしょうか?
クロスしていようがいまいが、その後の価格に与える影響は無(ランダム) だった訳です。
何の効果もないのにエントリー機会だけ絞っていたということになります。
本当はこれも思考実験で終わる話です。
MAは過去N本間の合計を何かしらの方法で平均化します。
MAの中に含まれるデータは過去N本間の価格であって、未来の価格ではありません。
MAの役割は、毎時毎分(定められたスケールで)指定期間の平均を取る、それだけです。
MAからしてみれば、指定期間の価格以外、過去も未来も何も見えていません。
そのため、1つ前の足のMA算出値とも関連性がありません。1本1本が唯独立しているのです。
MAが線で結んであることであたかもMAには連続性(傾向)があるように見えていますが、実直に表すなら"線"ではなく"点"がふさわしいはずです。
計算の構造上、当足にしか意味を為さないので線で繋げる必要がないからです。
それが分かっていれば、MAクロスの線の傾きや、3本以上のMAの組み合わせも検証する意味がありません。
上位足の環境認識として傾きを見るのも効果がありません。
意味のない事を二重に重ねても期待値は上がらないのです。
MAは価格が無ければ算出できません。
価格の前に立てない指標に未来の価格を予測できるとは到底思えません。
クロスがエントリーサインだと言っている方々は検証した上で言っているのか疑問です。
ここまで散々MAを叩きましたが、今回の検証範囲はあくまで "MAクロス" に関してです。
乖離やらグランビルに対して検証を行ったわけではないので、MA全般を否定している訳では無い点はご了承ください。
各指標の算出方法なんて知らなくて良いという方もいますが、私からすれば唯の甘えです。
きちんとインジケータの特性を理解しなければ、足を掬われていることに気づけません。
MAに限った話ではありませんが、「ゴールデンクロスするとその後は価格が上昇しやすくなります」等と言われて「はぇ~」と脳死で納得してはいけません。
必ず「なんで?」と疑問を持ち、立ち止まって考えましょう。
今回の内容は以上になります。
私がMA過激派ゆえに、トゲのある言い回しが目立ったかもしれません。
今回ネガティブな内容だったので、次回はポジティブな内容を届ける予定です。
またMAに関してはいろいろな使い方がありますので、そのうち他の事項も検証できれば良いなと思っています。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
Is it OK?