これからの外国為替場の行方 第108回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
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※この記事は、FX攻略.com2019年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
米・日の株価や経済にはもうひと盛り上がりがある?
前回更新分の本欄で指摘したとおり、やはり昨年末から今年の年初あたりにかけての国際金融市場は、あまりにも悲観に傾き過ぎていた。少し振り返れば、そのきっかけの一つは昨年11月下旬にNYエコノミッククラブで講演したパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言で、それは当時のFRB自体の“不確定さ(政策方針が一定方向に定まっていない様)”を表していた。結果、12月下旬に向けて米・日の株価は見る見る大幅に下落して行き、連れてドル円も強い売り圧力に押され続けた。
そして年明け3日、こともあろうにドル円は一時105円を下回る水準まで瞬間的に下げる“フラッシュ・クラッシュ”に見舞われることとなり、もはやたまらずパウエル議長は市場の火消しに回ることとなった。既知のとおり、それは1月4日のことである。この日、パウエル議長は全米の経済学者が集まった会合の冒頭で、あらかじめ用意していた「金融政策を柔軟に見直す」「問題が発生すればバランスシートの正常化も含めて修正をためらうことはない」などの政策方針を読み上げた。
つまり今後、米利上げを一時停止したり、いわゆる“量的引き締め”を見直したりする可能性さえあることを暗に示唆したわけであり、このことを契機に市場のムードは一気に様変わりすることとなった。これは、ある意味で「いつか来た道」と言えるのではないか。古今東西、不況から脱して景気が拡大し始めた当初というのは、中央銀行が将来的なインフレ率の上昇を危惧するあまり、金融政策が景気の先回りをしてしまうことが往々にしてある(2018年にFRBが年4回もの利上げを実施したこともその一例)。
しかし、それによって折角拡大し始めた景気の先行きが怪しくなってくると、それまで正常化(あるいは引き締め方向)に向かっていた金融政策の方針が一旦ハト派に傾きがちとなる。その結果、再び景気は走り始めることとなるわけだが、そうなってから以降の金融政策というのは、暫くの間、景気の「後追い」をひたすら続けることとなる。これは金融政策が背負った“宿命”と言ってもいいだろう。
その結果として生じることとなるのが「バブル」である。もちろん、そんなバブルも最終的には様々なところで辻褄が合わなくなりはじめ、いつかは“崩壊”するわけであるが、その前に経済のバブルというものは、その炎を一旦メラメラと燃え上がらせるものなのである。
よって、今後の米・日の株価や米・日の経済は「もうひと盛り上がりしてもおかしくない」と筆者は個人的に見通している。
よろしいですか?