外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|年始急落後から4~5月まで。主要通貨の目先のシナリオとは?】
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
2019年年始の為替相場は2号前に予測したように波乱の幕開けとなりました。今後、米中貿易戦争が新冷戦時代に突入し、リスクオフの円高トレンドが続くのか? 2017年以降続く、ゆるやかな右肩下がりのレンジ相場で終始するのか? 少なくとも年始の外貨急落で、超楽観的なシナリオが消えた可能性が高いのは確か。改めて4~5月あたりまでの主要通貨の推移を検討します。
※この記事は、FX攻略.com2019年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
米中新冷戦時代がテーマに。アップル以外にも業績悪化企業が出て円高が進むリスクシナリオも
1月発売の本連載では、2019年のドル円相場のメインシナリオを「2016年末の高値118円台、それ以降の安値104円台を上限・下限にした、非常に狭いレンジ内での横ばい相場に終始する」としました。
しかし、チャート①に示したように、新年早々の1月3日、ドル円は米国のアップルが2018年10~12月の業績を下方修正したことによるNYダウの暴落(下げ幅は660ドル)に巻き込まれ、一瞬、104円台まで急落。年明けの取引開始からたった2日で、想定レンジの下限にタッチすることになりました。
ただ、その日中に反転上昇し、1月3日のドル円ローソク足の終値は107円台半ばまで戻し、1月中旬現在、下落には歯止めがかかったようにも見えます。
チャート①に、年末年始の値動きの中で起きた出来事をまとめましたが、年始の外貨急落、リスクオフの円高の背景には、
- 昨年12月20日の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ
- メキシコ国境の壁をめぐるトランプ大統領と民主党の対立による米国の一部政府機関の閉鎖(昨年12月22日~)
- 3月1日に期限を迎える、米国の対中国製品に対する関税引き上げ(10%→25%)
- アップルの売上高下方修正が示す中国経済の減速
- 1月発表の米国ISM製造業景況指数が約10年ぶりに悪化するなど、米国など世界経済全体に対する景気失速懸念の拡大
などがあります。
FRBの利上げに関しては、1月4日にパウエル議長が利上げを一時停止する可能性に言及したことから、一定の安心感が広がりつつあります。また、米国の政府機関閉鎖についてもいずれ妥協案が示される可能性が高く、また、このテーマ自体が株式や為替など金融市場に与える影響はそれほど大きくはないでしょう。
ただし、トランプ大統領が開けた“パンドラの箱”といえる米中貿易戦争は、知的財産権侵害や半導体やITなどハイテク分野の覇権争いにまで発展し、「実際の戦争」もありえる“米中新冷戦時代”の到来を予感させます。新冷戦になると、米国サイドに立つ日本は漁夫の利を得やすいという意見もあります。ただ、冷戦突入後の世界経済減速懸念は今後、長期間にわたって株式や為替市場にネガティブな影響を与える一大テーマになる可能性もあります。
さて、こうしたマクロな状況のもと、まずは4~5月の春先まで、ドル円がどのように動くか、チャート②に掲げた2017年9月からの週足チャートをもとに、上昇・横ばい・下落の三つのシナリオに沿って考えてみましょう。
ドル円はパウエルFRB議長による利上げがあった12月20日の週にそれまでのレンジ相場の下限である1ドル111円台(2018年10月安値)を割り込み、年末年始を挟んだ1月3日に一時、104円台まで急落しました。しかし、その週の値動きを示すローソク足Aの終値は108円と、4円ほど戻し、翌週は107円~109円の小幅な値動きとなっています。
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