「成長の踊り場」に差し掛かった企業への投資は何を見て判断すれば良いか?
株式投資は、企業の成長の果実を得るものです。一方で、成長に見合わない高値で買ってしまうと、果実を得るのは難しいものです。
つまり、長期投資で成功するには、成長性がある企業を、それに見合うかそれ以下の価格で買わなければなりません。数ある銘柄の中から、このような銘柄を見つけるのが長期投資の醍醐味です。
私が割安成長株を長期保有できる理由
成長性と価格がアンバランスになるタイミングの一つに「成長の踊り場」があります。
成長を続けてきた銘柄の成長に少し陰りが見えたと投資家が判断すると、高値を更新していた株価が突如下り坂となることがあります。
一度下がり始めると、その勢いはなかなか止まりません。PER50倍が30倍になるなら割高感の修正ということで理解できますが、これが20倍、10倍と下がることもあります。
成長性が鈍化したとしても、まだ成長を続けている銘柄にこの数値は割安です。そのまま成長を続ければ、いくらなんでも下がりすぎと判断され、株価は再び上昇に転じます。
多少時間はかかるかもしれませんが、その間に利益が2倍、PERが10倍から30倍になれば、株価は2×3=6倍に成長します。
また、仮に成長しなくても、PER10倍で買えれば下落余地は限定的です。(PER30倍の銘柄との比較感において。)だからこそ、私は割安な成長株を長期保有することに躊躇しないのです。
踊り場を脱出できるかどうかは、経営者本人も「わからない」
では、成長の踊り場に差し掛かっている企業が、その後も成長するかどうかを見極めることはできるのでしょうか。
結論から言えば、難しいと思います。なぜなら、私自身も小規模ながら会社を経営している経験上そう言えるからです。
私の事業も、立ち上げと踊り場の苦悩を味わっています。もちろんそこから抜け出そうとするのですが、なかなか思うようにいかないものです。このときは、うまくいく自信などどこにもありません。
経営者本人に自信がないのですから、まして投資家が外部から見てその可能性を判断できるでしょうか。答えは限りなくNOだと思います。
周辺事業の拡大で本業がおろそかになれば本末転倒
それでも、苦境を脱出するにはもがくしかありません。踊り場に差し掛かった企業の経営者が取る行動には、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 周辺事業に手を広げる (M&A含む)
- 本業に立ち返ってもがき続ける
- 現状に安住する
1は分かりやすい方法でしょう。それまでに培ったノウハウや顧客基盤を使えば、周辺に手を伸ばすことで企業価値を成長させられる可能性があります。
ただし、成功率を高めるには本業を活かすことが必要であり、そうでなければお金をドブに捨てることにもなりかねません。(NTTドコモ(9437)がよくこのような行動を取っています。)
ドコモのM&Aは苦い経験の連続だ。00年代に米AT&Tワイヤレスなどに計約2兆円を投じたが約1兆円の巨額損失を計上して撤退。インド最大の財閥であるタタ・グループの通信会社への出資も失敗に終わった。「海外投資は事実上凍結している」(ドコモ関係者)状態にある中、代わりに将来の成長の柱と見込んだのが国内の異業種買収戦略だった。
【出典】日経ビジネス(2018年2月14日)
その象徴的案件だったらでぃっしゅの買収と売却で差し引き60億円に上る「勉強代」を支払った。M&Aでなかなか成果を出せない“買収下手”を露呈したドコモは、いつまで勉強代を支払い続けるのだろうか。
ただ失敗するだけなら一向に構わないのですが、まだリソースが十分でない企業が新規事業に執着するばかりに本業がおろそかになる場合があります。こうなってしまっては本末転倒です。一度失ったものを取り戻すのは容易ではありません。
最後は経営者の意欲に懸かっている!
2と3は、見分け方が難しい問題です。周辺事業がうまくいかなかったら、本業回帰と言って勝手知ったる事業での成長を目指します。
しかし、同時にそれは成長を諦めてしまうことにも繋がりかねず、投資先として魅力的でなくなることも少なくありません。
結局のところ、踊り場から抜け出して成長を続けるには、経営者がいかに成長意欲を持っているかにかかっています。経営者に成長意欲がなくなってしまったら、その企業はそれまでです。
経営者に意欲があるかどうかを判断するには、中期経営計画の目標数値はもちろん、説明会動画やインタビュー記事を参考にします。それを見て「この経営者はまだ頑張れる」と思えれば、投資する価値があると言えるでしょう。
あなたもぜひ、自分のお気に入りの経営者を見つけてみてください。
よろしいですか?