16年ぶりにパラジウムがゴールドを上抜く[佐藤りゅうじ]
佐藤りゅうじさんプロフィール
さとう・りゅうじ。1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー ドイサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。
公式サイト:佐藤りゅうじブログ
※この記事は、FX攻略.com2019年3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
供給不足が深刻
2018年1月号でパラジウムがプラチナを上抜いたことをお伝えし、今後もパラジウムはプラチナに対して上ザヤが続くと述べました。しかし、その後のパラジウムの上昇は予想をはるかに上回り、2018年12月5日には、何と16年ぶりに金価格をも上抜きました(チャート①参照)。今回は、上昇を続けるパラジウムの今、そして今後を占っていきましょう。
この誌面でパラジウムのことを書いたのは、1年以上も前になります。パラジウムと聞いて、ぴんとくる方は多くはないでしょう。ましてパラジウムの投資経験がある方は、日本では少数派かと思いますので、最初にパラジウムについて簡単に説明します。
パラジウムは、金、銀、プラチナと同様に貴金属と呼ばれ、その主な用途はガソリン車の自動車触媒です(ディーゼル車の主な触媒はプラチナ)。調査会社のゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ社(GFMS)のデータ(表①参照)によると2017年は総需要315.7トンに対し、自動車触媒需要は245.1トンと総需要の約77%にあたります。その他には電子材料、歯科用材、宝飾品用材などの用途に使われます。
一方、主産地は同データによると2017年は、南アフリカとロシアの二国で鉱山生産の約78%を占め、さらに北米の鉱山生産を加えると総生産の9割を超えます。これに使用済みの自動車触媒を回収したものを加えた数値が、パラジウムの総供給量となります。2017年の総供給は278.3トンでした。総供給量の278.3トンから総需要の315.7トンを引くとマイナス37.4トン、つまり37.4トンの供給不足です。
パラジウムの供給不足は2010年から続いており、2018年も約41.3万トンの供給不足が見込まれています。また、GFMSは2020年まで毎年約32万トン強の供給不足が発生すると予想しています。
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