もみ合い続く天然ゴム[佐藤りゅうじ]
佐藤りゅうじさんプロフィール
さとう・りゅうじ。1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー ドイサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。
公式サイト:佐藤りゅうじブログ
※この記事は、FX攻略.com2019年8月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
現在の相場はもみ合い
2019年4月号で、天然ゴム価格が2年ぶりの安値をつけた後、産地要因から急反発になったことをお伝えしました。今号では、米中貿易摩擦が激化する中、供給要因と需要要因のせめぎ合いとなっている天然ゴム市場の今後を占っていきたいと思います。
まず昨年後半からのゴム相場の大きな流れを、東京ゴム先限のチャート(呼値1キログラム)を見ながら簡単に振り返りましょう(チャート①)。一目していえるのは、昨年11月から今年の3月にかけて約60円もの上げ相場となったことです。3月4日につけた209.5円が現時点での年初来高値です。この間の上昇の背景として、昨年12月にタイ、インドネシア、マレーシアの世界三大天然ゴム生産国が、採算コストを割り込む天然ゴム価格に業を煮やし、市況対策のための会議を開き、今年3月に輸出削減で合意したことが挙げられます。
ただ、輸出削減で合意した後は、「うわさで買って、事実で売られる」展開となりました。買い材料が出尽くしとの見方から、3月28日には180.2円まで下落しました。その後は、185~195円前後でのレンジ相場となっています。
今後供給減の可能性
現在、値動きは方向性を欠いていますが、ファンダメンタルズをみると供給要因と需要要因のせめぎ合いとなっています。供給要因からみると、今年は異常気象から生産が減少することが予想されます。ゴム生産には、ゴム樹からゴム液を採取するタッピングと呼ばれる作業があります。タッピングを行うためには、ゴム樹に十分な水分があることが必要です。そのため、雨季が非常に重要になってきます。
しかし、今年はエルニーニョ現象の影響から、世界最大の天然ゴム生産国・タイの雨季入りが遅れました。例年は、ソンクラーン(水掛け祭り)と呼ばれるお祭りがある4月13~15日辺りが、乾季から雨季への季節の変わり目とされますが、今年は5月20日にようやく雨季に入っており、例年より1か月ほど遅れました。このため、今年のタイのゴム生産量は5~10%前後減少する可能性があります。
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