英国保守党党首選スケージュールと候補者まとめ(随時更新)6月20日更新
英国では、6月7日で辞任したメイ首相の後任を巡り、与党保守党党首選が開催されます。 6月9日時点でわかっているプロセスや立候補者などをまとめていきたいと思います。
現時点では、ボリス・ジョンソン前外相が最有力とされています。
ボリス・ジョンソン前外相は、即「合意なき離脱」とまでは言っていませんが、「10月31日には合意のあり・なしにかかわらず離脱」と言っています。
以下のスケジュールで、ボリス・ジョンソン前外相が落選した場合や、ボリス・ジョンソン前外相の方針が変わった場合に、ポンドが動くのではないかと注目しています。
◎保守党党首選プロセス
今回の党首選では、下院議員による振り落とし方式で2人に絞られ、最終的に12万4000人の保守党員による郵便投票で決まります。
6月10日「立候補締め切り」
10:00(日本時間18:00)~17:00(日本時間25:00)
・8人以上の保守党議員からの推薦が必要
6月13日「第1回議員投票」
日本時間18:00~20:00投票、21:00結果発表予定
・17名以上の保守党議員の獲得票が必要
・16名以下の獲得票の場合は落選
6月16日「候補者討論会」
・TVによる放映予定
6月17日「候補者撤退締め切り」
・翌日の議員投票で33名の獲得票が見込めない候補者は、自ら撤退することもできる
6月18日「第2回議員投票」
日本時間23:00~翌1:00投票、2:00結果発表予定
・33名以上の保守党議員の獲得票が必要
・32名以下の獲得票の場合は落選
6月19日「候補者撤退締め切り」
日本時間19日早朝4:00締切
・第2回目議員投票の結果発表後、落選はしなかったものの、自ら撤退する候補者は4時までに撤退
6月19日「候補者討論会予定」
ロンドン時間午後(日本時間19:00~22:00ごろ)
・BBC1で放映予定
6月19日「第3回議員投票」
日本時間23:00~翌1:00投票、2:00結果発表予定
・第2回議員投票で決まらなかった場合に投票
6月20日「候補者撤退締め切り」
日本時間20日早朝4:00締切
・第3回目議員投票の結果発表後、落選はしなかったものの、自ら撤退する候補者は4時までに撤退
6月20日「第4回、第5回議員投票」
第4回:日本時間18:00~20:00投票、21:00結果発表予定
第5回:日本時間23:30~翌1:30投票、2:00結果発表予定
・第3回目の投票で候補者が2名に絞られていない場合は、第3回、第4回と候補者が2名になるまで議員投票
6月22日~「保守党党員による決選投票」
6月22日以降、BBC、SKYテレビ、ITVなどで2候補による討論会開催予定
・立候補者が2名になった後は、英国全土の保守党員12万4000人による決選投票
・郵便投票のため時間がかかる
7月22日「結果発表」
・保守党員による郵便投票の結果が発表される見込み
◎立候補者
マイケル・ゴーヴ環境相
「離脱強硬派」
第1回目投票結果:37票
第2回議員投票結果:41票
第3回議員投票結果:51票
元ジャーナリストのゴーヴ氏は、2005年に初当選。
デイヴィッド・キャメロン前首相の側近だったが、2016年の国民投票では欧州連合(EU)離脱派キャンペーンに身を投じた。
しかし、キャメロン氏辞任後の党首選では離脱派の中心的存在だったボリス・ジョンソン前外相を批判し、自ら立候補した。
メイ政権では環境相としてメイ氏のブレグジット(イギリスのEU離脱)協定を支持し続け、ブレグジット強硬派とは距離を置いていた。
ゴーヴ氏は自身を、「党をまとめられる候補」としてアピールしていくもようだ。
出馬に当たって: 「保守党をひとつにまとめ、ブレグジットを実現し、この素晴らしい国を主導することが、自分にはできると思う」(5月26日、自宅前にて)
マット・ハンコック保健相
「離脱穏健派」
第1回目投票結果:20票 → 辞退
「党が現在の特殊な状況にふさわしい候補を探していることは明らかだ」として、14日辞退を決断
イングランド銀行のエコノミストだったハンコック氏は、もともと文化相だったが、ジョンソン前外相の辞任に伴いジェレミー・ハント氏が外相となった際、後任として保健相となった。
2016年の国民投票では残留派だったが、現在はEU離脱派だとみられている。 また、メイ首相が先に発表した離脱協定法案にも賛成し、議員に支持を呼びかけていた。
ウェストミンスター(英政界)きってのテクノロジーに精通した1人を自認し、議員として初めて、自らのスマートフォンアプリを作った人物でもある。
出馬に当たって: 「私たちには、その場しのぎではなく、未来のためのリーダーが必要だ」(5月25日、BBCのラジオ番組にて)
ジェレミー・ハント外相
「離脱穏健派」
第1回目投票結果:47票
第2回議員投票結果:46票
第3回議員投票結果:54票
ハント氏は文化相として2012年のロンドン五輪に携わった後、保健相を6年務め、ジョンソン氏の辞任に伴い外相となった。
2016年の国民投票では残留派だったが、現在はEU離脱派。EUを旧ソヴィエト連邦に例えたことで批判を浴びたこともある。
出馬に当たって: 「メイ氏は国民投票の結果実現に情熱を注いでいたが、その責任は今後、別の人が担うことになる」(5月24日、地元紙ファーナム・ヘラルドの取材に答えて)
ボリス・ジョンソン前外相
「離脱強硬派」
第1回目投票結果:114票
第2回目投票結果:126票
第3回議員投票結果:143票
前ロンドン市長のジョンソン氏はずっと前から、首相の座を求めてきた。出馬を表明した際には「もちろん、立候補する」と話していた。
2016年国民投票ではEU離脱派のリーダーだったジョンソン氏は昨年、メイ首相の離脱協定に反発して外相を辞任。その後はメイ政権とその政策を、誰よりも批判していた。
保守党内では支持者の多いジョンソン氏だが、議会ではそうではない。ジョンソン氏はまず、保守党員が投票する決選投票まで進めるよう、保守党下院議員たちを説得しなくてはならない。
2016年夏の党首選にも出馬していたが、ゴーヴ環境相が自分を批判して立候補した後に辞退している。
出馬に当たって: 「新党首は今までとは違う方法で政策を進める機会を得る。新政権は勢いづくだろう」(5月24日、スイスでの会議で)
アンドレア・レッドソム前下院院内総務
「離脱強硬派」
第1回目投票結果:敗退
EU離脱派の中心的存在でもあるレッドソム氏は、メイ首相が離脱協定法案への支持を訴えていた最終局面で、下院院内総務を辞任した。 辞任の際には、政府のブレグジットへの対応を信じられなくなったと話していた。
2016年の党首選ではメイ首相と争ったが、メイ氏に子供がいないことに言及し、大きな批判を浴びて出馬を取り下げた。
その後、環境相としてメイ政権に入閣し、後に閣僚級の院内総務となった。
出馬に当たって: 「交渉で成功するには、退席して破談にする覚悟も必要だ」(5月26日、英紙サンデー・タイムズの取材に答えて)
エスター・マクヴェイ前雇用・年金相
「離脱強硬派」
第1回目投票結果:敗退
元アナウンサーのマクヴェイ議員はEU離脱派。昨年11月にメイ首相の離脱協定に反発して雇用・年金相を辞任した。
ラジオ番組「トーク・レイディオ」の電話取材で出馬の意向を聞かれたマクヴェイ氏は、「常々、保守党内で十分な支持を得られれば出馬したいと明確にしていたが、今回、新たに私を指示してくれる人たちができ、私はその支持を得た」と語った。
出馬に当たって: 「私も含め、誰が次の首相になるにしろ、10月31日というブレグジット期日は絶対だ」(5月24日、ラジオ番組の電話取材にて)
ドミニク・ラーブ前EU離脱相
「離脱強硬派」
第1回目投票結果:27票
第2回議員投票結果:30票 敗退
元弁護士のラーブ氏は、2016年の国民投票の前からEUからの離脱を訴えており、2010年の初当選時から首相就任への野心も表明していた。
2018年7月に前任のデイヴィッド・デイヴィス氏が辞任した後にEU離脱相となり、EUとの離脱交渉を担当したが、11月にはメイ首相の離脱協定を支持できないとして辞任した。
出馬に当たって: 「より公正なブレグジット協定、イギリスの労働者によってより公正な協定、そして全ての子供たちがその可能性を花開かせられるような公正な社会のために戦う」(5月26日、メール日曜版にて)
ローリー・スチュワート国際開発相
「離脱穏健派」
第1回目投票結果:19票
第2回議員投票結果:37票
第3回議員投票結果:27票
スチュワート氏は5月、ギャヴィン・ウィリアムソン氏の更迭に伴う人事で国際開発相となった。 それ以前は法相の下で刑務所担当次官を務めていた。
一時はEU残留派だったものの、現在はブレグジットを受け入れているという。 一方、「イギリスを一致させるため、残留派にも手を差し伸べたい」と述べている。
出馬に当たって: 「語るのではなく、行動で示そうと思う」(5月25日、BBCのテレビ番組「Breakfast」にて)
サジド・ジャヴィド内相
「離脱穏健派」
第1回目投票結果:23票
第2回議員投票結果:33票
第3回議員投票結果:38票
ジャヴィド氏は、両親がパキスタン出身の移民2世。父はバスの運転手で、1ポンドを握り締めてイギリスにやってきたという。 ジャヴィド氏は政界に入る前はドイツ銀行に勤務していた。
2010年に初当選し、キャメロン政権のジョージ・オズボーン元財務相の側近で、ビジネス担相、文化相、コミュニティ・地方自治相などを歴任した。
2016年国民投票では残留派だったが、「決して熱心ではない」と発言するなど、欧州懐疑派となっている。
マーク・ハーパー前下院院内幹事長
「離脱穏健派」
第1回目投票結果:敗退
2010~2015年には内務次官と雇用・年金担当次官を務めた。
2016年の国民投票では残留を支持したが、現在は協定に基づく離脱を推進しており、イギリスにとって「良い協定」を得るにはさらなる期限延長も必要になるとしている。
◎出馬予想されていた、出馬を取りやめた議員
サム・ジーマー前高等教育機関・研究・科学・イノベーション担当閣外相
2018年11月まで高等教育機関・研究・科学・イノベーション担当閣外相を務めていたジーマー氏は、ブレグジット協定に反対して辞職した。
メイ首相のブレグジット協定を「名ばかりの協定」と批判し、2度目の国民投票案を支持。実現した際には自身は残留に投票すると述べている。
サー・グレアム・ブレイディー
1997年に初当選。2010年以来、党首不信任動議など一般議員による党内手続きを扱う、「1922年委員会」の委員長を務めたが、メイ氏辞任発表を受けて委員長を辞任し、出馬を検討していると明らかにした。
ペニー・モーダント国防相
ギャヴィン・ウィリアムソン氏の更迭により今年5月、イギリス初の女性国防相となった。
海軍予備役としての経験もあり、キャメロン政権では国防省の軍担当閣外相も務めた。
2016年国民投票では離脱運動を推進し、その後の党首選でも離脱派のレッドソム氏を支持した。
プリティ・パテル元国際開発相
2010年5月に初当選。財務省や労働・年金省の閣外相を経て国際開発相になるも、2017年11月には、政府に無断でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相らと会談していたことの責任を取って辞任した。
ブレグジット強硬派として、党内右派の支持を得ている。
リズ・トラス財務首席政務次官
ブレグジット派の右派。2016年に女性初の大法官と司法相となったものの、高等法院の首席判事など法曹界幹部と衝突を重ね、翌年6月の内閣改造で現職に移った。
キャメロン政権では環境相を務め、2014年党大会で「この国はチーズの3分の2を輸入している。なんて、みっとも、ない」と発言したことが、ソーシャルメディアなどで大きな話題となった。
スティーヴ・ベイカー元EU担当閣外相
ブレグジット強硬派。2010年初当選で、保守党の離脱推進派議員が構成する「欧州調査グループ(ERG)の副会長。
デイヴィス・ブレグジット担当相(当時)と同時に閣外相を辞任し、メイ政権のブレグジット方針を批判した。
Is it OK?