頭の体操1、2、3[森晃]
森晃さんプロフィール
エコノミスト。シンクタンク(アメリカ合衆国)に所属。専門分野は、為替政策、金融政策、マクロ経済政策、金融規制。市場関係者、金融当局者、政策当局者と交流し、多方面から為替の動向について分析を行っている。
※この記事は、FX攻略.com2018年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
幼少時代、『ファーブル昆虫記』が大好きで児童版をよく読んだ。小学校の高学年になると、横溝正史や北杜夫などの小説を好んで読んだ。そのころ、多湖輝著の『頭の体操』もよく読んだ。本当に、この本は良い頭の体操になった。
2018年ここまでの為替を振り返ると、今年も為替レートはよく動いた。世界経済に関しては、保護主義から生ずる貿易戦争についてエコノミストと幾度となく議論した。中央銀行から民間銀行に転身した豪州のエコノミストとは、中国と米国の貿易戦争から世界経済の先行きについて広く議論をした。そして、アカデミアとして、ある大学教授と「人民元の行方」「金融政策と為替政策」「貿易戦争と通貨戦争」についてここ数年議論を続けている。この議論は、筆者にとって「通貨版頭の体操」を読んでいるような感じであり、いつも興奮を覚える。
ドルの歴史を紐解く
1944年、「ブレトン・ウッズ協定(**)」により、金1オンス=35米ドルと交換レートが定められた。これにより、それぞれ各自の通貨は金本位制を取るドルに「ペッグする(**)」ことで固定相場制となった。しかし、1971年、「ニクソン・ショック」により、固定相場制度が終焉した。これは、ニクソン米大統領がドルの金兌換(だかん)の停止を宣言したことによる。
その後、1985年、先進国5か国(米・日・英・独・仏)の大蔵大臣と中央銀行総裁がニューヨークのプラザホテルに極秘裏に集まり過度なドル高是正のための会議が開かれ、歴史的な合意である「プラザ合意」が発表された。その内容は、基軸通貨である「ドル」に対して、各国の通貨「円」「ポンド」「マルク」「フラン」を一律10%から12%幅で切り上げることに合意するというもの。そして、その合意を実行するため、各国は協調介入を行った。
* 連合国44か国が、米国のニューハンプシャー州ブレトン・ウッズに集まり、第二次世界大戦後の国際通貨体制に関する会議を開催し、国際通貨基金(IMF)協定などが結ばれた。
** 「ペッグする」とは、米ドルなど特定の通貨と自国の通貨の為替レートを一定に保つこと。
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