原油、高値圏でのもみ合い続く[佐藤りゅうじ]
佐藤りゅうじさんプロフィール
さとう・りゅうじ。1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー ドイサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。
公式サイト:佐藤りゅうじブログ
※この記事は、FX攻略.com2018年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
地政学リスクの高まり
原油価格は、高値圏でのもみ合いが続いています。トランプ米大統領は、石油輸出国機構(OPEC)に対して、再三、価格を引き下げるために増産の実施を要求していますが、9月23日にOPECとロシアなど主要非加盟産油国がアルジェリアで開いた共同閣僚監視委員会(JMMC)では、原油の増産が見送られました。NY原油期近(以降、NY原油)の年初来高値は、7月3日につけた75.27ドルですが、これを上抜き80ドルを試す可能性もありそうです。今回は、今後の原油相場の行方を考えてみたいと思います。
今年のNY原油の値動きをみると、1~4月ごろまでは、60~70ドル前後のレンジで強もち合いとなっていましたが、5月以降は65~75ドル前後にレンジを切り上げています(チャート①)。チャートをみると、4月に入ってから地合いが引き締まってきたことが分かりますが、この背景には、米英仏によって行われたシリアの化学兵器関連施設への攻撃があります。そして5月に入ると、米国が欧米など6か国とイランが結んだ核合意からの離脱を表明しました。これを受けて、NY原油は5月22日には72.83ドルまで上昇しました。
その後、6月には63.59ドルまで軟化する場面もありましたが、供給懸念を背景に7月3日には2014年11月以来の高値となる75.27ドルまで上昇しました。その後の反落場面は65ドル前後で支持されており、相場が大きく崩れることはなく、9月に入ると70ドル台での滞空時間も長くなっています。
原油価格が高値圏でのもみ合いが続いている要因の一つには、産油国のベネズエラがチャベス前政権の失政の影響から、資金、人材、技術、機材が不足し、原油の生産量が減少していることも挙げられます。国際エネルギー機関(IEA)によれば、同国の原油輸出は2018年半ばまでの3年間で2分の1に減少し、日量100万バレルとなっています。IEAのビロル事務局長は、同国の原油生産量は一段と落ち込むとの見通しを示しています。
現状、2016年12月に合意した、OPECとロシアなどOPEC非加盟の主要産油国による15年ぶりとなる協調減産に加え、米国のイラン経済制裁への思惑、ベネズエラの原油生産の減少が、相場の下支え要因になっています。
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