これからの外国為替場の行方 第104回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2018年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
8月下旬に発現したシグナルを今後の参考とする!
前回更新分の本欄において、筆者は「思い返すと、ドル円相場にとっての『陰の極』というのは、8月17日から週明け20日にかけての時期だったと言えるのではないだろうか」と述べた。実際、8月21日のドル円は一時109.77円まで値を下げる場面があったものの、最終的には下ヒゲを伴う陽線となり、その後111円前後でもみ合う時間を暫く過ごして、執筆時までには一時113円台に乗せる場面を垣間見るに至っている。
前回も述べた通り、やはり「相場の潮目の変化を“得も言われぬ皮膚感覚のようなもの”で察知することは重要だ。8月下旬の一例を引けば、当時はロイター通信が「トルコリラ安で外国人客が爆買い」などと報じていたことが思い起こされる。そんな非日常的なニュースが飛び交うようになる頃、往々にして市場は「セリング・クライマックス」のタイミングを迎えたりするものである。
もちろん、単に“皮膚感覚”のみで相場の基調転換を察知するというのでは、あまりにも乱暴に過ぎる。では、併せてどのような“情報”が必要かと言えば、それはテクニカル(分析)から得られる各種のシグナルということになろう。
おさらいになるが、基本的にファンダメンタルズは相場が向かう「方向(ベクトル)」を左右するものであるが、向かう「水準(レベル)」を想定するためにはテクニカルを用いることが必須となる。例えば、2016年6月のブレグジット・ショック発生時(よく引き合いに出される)、ドル円が向かう「方向」は間違いなく下であったが、どの「水準」で下げ止まるかは、最終的に62か月移動平均線が位置するところによって知るところとなった。
そうした観点から、8月下旬のドル円の「陰の極」を再度振り返ると、確かに8月20日の終値=110.06円というのは、5月29日安値から7月19日高値までの上昇に対する61.8%押しとピタリ一致する水準であった。加えて、当時の下値は一目均衡表の週足「雲」下限がサポートする格好にもなっていた。
つまり、複数の節目に到達して一旦下げ止まったドル円は、テクニカルに反発して執筆時までに7月高値=113.18円に顔合わせするまでの戻りを見せたのである。このように、8月下旬から9月下旬にかけては基本的にドル円が強気になびきやすくなったわけだが、そこには日経平均株価の上昇というもう一つの支援材料もあった。
なお、その点については前回更新分の本欄で「9月になれば海外勢も市場に戻ってきて相場に活気が戻ることから、そろそろ年末に向けてひと盛り上がりあってもいいのではないか」などと考える時節である点に触れた。
つまり、8月下旬から9月初旬にかけては、総合的に考えて「ドル円の買いどき」であったということになる。もちろん、今となっては“後の祭り”かも知れないが、こうしたことが後々の参考になることも再認識しておきたい。
よろしいですか?