米国の景気は底堅く、欧州の経済減速懸念からユーロ売りドル買いが強まる[江守哲氏メルマガより]
GogoJungleが提供している江守哲さんの投資メルマガ「江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー」より、今朝配信されたものからほんの一部をご紹介。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は上昇。堅調な米小売売上高を受けて円売り・ドル買いが先行し、108円台前半に上昇した。6月の米小売売上高は前月比0.4%増加。プラスは4カ月連続。変動の激しい自動車・同部品ディーラーを除くと0.4%増だった。市場予想は全体が0.1%増、自動車・同部品を除くと0.1%増で、ともに市場予想を上回った。これを受けて、米景気の先行きに対する過度の懸念が後退し、米長期金利が上昇したことで円売り・ドル買いの動きが強まった。
また、ドイツの欧州経済調査研究所(ZEW)が発表した7月の景気期待指数は前月比3 .4ポイント低下のマイナス24.5となり、3カ月連続で悪化した。ユーロ圏内の経済減速懸念からユーロ売り・ドル買いが強まり、対ユーロでのドル買いが対円に波及した。ユーロドルは1.12ドル台前半で推移した。 ポンドドルは一時17年4月以来初めて1.24ドルを割り込んだ。英国の次期首相の座を競うボリス・ジョンソン氏とジェレミー・ハント外相が、メイ首相の離脱協定案に盛り込まれたアイルランドとの国境問題に関する安全策について、期限が設定されても受け入れない意向を示した。これを受けて、合意なきEU離脱のリスクが急上昇したことで、ポンドに売りが出た。この日の下落で、1月3日にアルゴリズム取引による瞬間的な暴落である「フラッシュ・クラッシュ」で付けた水準をも下回ったことになる。ポンドは対円でも133円台にまで売 られ、1月3日に付けた132円台をうかがう展開だった。
ECB次期総裁に指名されている国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は声明を発表し、9月12日付で辞任すると明らかにした。IMFは今後、後任探しに着手することになる。歴代のIMFトップは欧州出身者が就いており、「慣例」に従う可能性が高いとみられている。ラガルド氏は今月2日にEUからドラギECB総裁の後任に指名された後、専務理事職を離任した。リプトン筆頭副専務理事が代行に就いている。IMFが速やかに新体制へ移行するため、辞任時期を明確にしたとみられる。 ラガルド氏はIMF初の女性トップとして11年に就任。16年に再任され、21年7月までの任期途中だった。金融危機後の世界経済回復に貢献したほか、女性や社会的弱者に視点を当てた支援を重視した。国際金融機関のトップ人事では、IMFが欧州出身者、世界銀行は最大出資国の米国出身者が独占している。ラガルド氏の後任探しも欧州出身者の中から選ばれる方向だが、新興国には先進国がポストを固定化していることに不満も根強い。
【通貨トレード戦略】
ドル円はロングを維持します。下げそうですがなかなか下げない状況が続いています。株価との連動性も薄れているようです。米金利の細かい日々の動きに追随している状況ですが、月末のFOMCでの利下げがすでに十分に織り込まれている中、目新しい材料が出ないと動きづらくなっているようです。とはいえ、上値も108.80円程度が限界的とみられるため、過度な期待もしづらいといえます。引き続き107.50円割れまではポジションを維持して、状況を見守りたいと考えます。また、収益機会という面では、いまはドル円よりも、むしろ 他の主要通貨を重点的にトレードしたほうがよさそうです。
もっとも、過去最高値を更新している米国株が崩れると、さすがにドル円は売られるでしょう。その場合には、安全資産としての買いが円に入ることで、円が全面高になる可能性が高まりそうです。IMM通貨先物市場では、依然としてドルロングが積み上がっていますが、円先物はほぼニュートラルです。上昇・下落のどちらにも動くことができる状態です。したがって、市場の動きを見て判断すれば十分でしょう。
繰り返すように、7月後半に入り、5月に続いて今年2回目の重要な調整局面となり得る8月が近づいています。株安・円高のリスクが高まる可能性がありますので要注意です。年初から、「今年は5月、8月、11月に注意」としてきました。その通り、5月は株価が急落しました。そして、調整相場の第2弾となる8月が2週間後に迫ってきました。いまの時点でドル円のロングを保有しているのはあまり賢明とは言えませんが、107.50円を割り込めばそこは割り切って手仕舞いし、ショートを検討したいところです。
ただし、そのタイミングは 来週後半になる可能性がありそうです。 いまの市場はボラティリティがあまりに低い状態です。これ自体がリスクとも言えます。市場はあまりに楽観的のように見えます。特に米国株式市場の楽観度があまりに強すぎます。日本株もボラティリティが低下しすぎています。これはいずれ大きな動きにつながります。リスクオフになった場合に、ドル円の下落は不可避でしょう。リスク資産の売却の動きが進めば、簡単に円高になります。準備を怠らないようにしたいところです。
円高基調が鮮明になった場合には、年末まで最大で96円までの下げの可能性があるとみています。 投資戦略対象の通貨ペアを変更します。新興国通貨は変動が激しいので外します。 主要通貨のペアを主体的に行うようにいたします。 対象は円、ユーロ、ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドルとします。 いまはカナダドルやNZドルが最強通貨になっています。
ドル円:ロング
ユーロドル:なし
ポンドドル:ショート
豪ドル/米ドル:なし
NZドル/米ドル:ロング
米ドル/カナダドル:ショートユーロ円:なし
ポンド円:ショート
豪ドル円:ロング
NZドル円:ロング
カナダドル円:ロングユーロポンド:ロング
ユーロ豪ドル:ショート
ポンド豪ドル:ショートユーロNZドル:ショート
ポンドNZドル:ショートユーロカナダドル:ショート
ポンドカナダドル:ショート
豪ドルカナダドル:ショート
NZドルカナダドル:なし
『江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー』(江守哲)より引用。
調整局面となる8月が近づいて来ているので株安・円高リスクに注意すべしと江守さん。材料不足で市場の動きが少ない中、調整相場への突入が相場全体にどのように影響を与えるのでしょうか。(編集部)
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