これからの外国為替場の行方 第103回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2018年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
相次ぎ噴出する不透明材料は雨後の筍のごとく…
今、あらためて8月を振り返れば、とにもかくにも市場の話題は「トルコ」「中国」であった。もともと海外勢が長い夏季休暇入りで市場が閑散とし、基本的に手掛かり材料不足に陥りやすい状況にあって、トルコリラと中国人民元(加えて、上海総合株価指数)の急激な下落は、市場がリスクオフのムードに染まるに十分なネタを提供してくれた。
ことにインパクトが大きかったのは、8月10日に英フィナンシャル・タイムズ紙が伝えた「関係筋によれば、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の金融機関によるトルコへのエクスポージャーを懸念している」との記事だった。具体的にスペインのBBVAやイタリアのウニクレディト、フランスのBNPパリバの名前まで記事のなかで挙げられたことで、一層リアリティーと問題の深刻度合いが増幅して伝わったことも災いしたのだろう。振り返れば、それから数日間は実に不穏で暗いムードが市場を覆い尽くした。そこに、当然のごとく米国とロシアが絡んでくるから余計に問題の根は深い。あろうことか、米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコと仲たがいする羽目となり、そこに付け込んだロシアが今度はトルコに急接近するという状況になっている。
当然、中間選挙を間近に控えたトランプ米大統領も簡単には引き下がれない。もちろん、一方のトルコ、中国、ロシアの独裁者らの立場からすれば、なおのこと安易な妥協などあり得ない。もはや、トランプ氏は政治的な訴求力が期待できないという理由で北朝鮮への興味は失った模様であり、ゆえに余計に“中国叩き”にばかり力が入る。米中の通商問題は、もはや“戦争”状態に突入してしまっており、水面下での双方の努力で何らかの落とし処を見出してもらわないことには、市場に漂うリスクオフのムードもなかなか完全には払しょくできないことであろう。
それにしても、次から次へと新たな問題の芽が出てくるものである。ある論客がテレビで「雨後の筍」に例えていたが、まったくその通りで油断がならない。
よろしいですか?