外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|米国大統領選まであと1年。主要通貨ペアをシナリオ別に展望!】
米中通商交渉の進展期待や世界的な金融緩和もあり、秋口の為替市場は落ち着きを取り戻してきました。しかし、金融市場最大の波乱要素といえるトランプ大統領にとっての審判の日、2020年11月の米国大統領選があと1年にまで迫ってきました。2016年秋のトランプ大統領選出以降の値動きから、今後1年間の展開をシナリオ別に検証してみましょう!
※この記事は、FX攻略.com2019年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
平気で嘘もつくトランプ大統領。米中貿易戦争停戦も!?ドル円上昇シナリオとは?
トランプツイートに振り回された乱高下相場も一応落ち着きを見せ、9月中旬の金融市場では「債券から株式へ」という流れが進んでいます。8月に1.48%まで低下した米10年債は、9月中旬には1.7%台まで上昇(債券価格は下落)し、NYダウは、史上最高値圏の2万7000ドルの大台を再び回復しました。長く低迷を続けていた日本株も反転し、ドル円は104円台を割り込むどころか、108円台を突破しました。
先月号では「トランプ大統領のトリセツ」を論じましたが、9月の株価上昇や円安ドル高のきっかけになったのも8月26日の「中国側が通商交渉再開を求める電話をしてきた。中国側はなんとかしたいのだろう」という内容のトランプツイートでした。しかし、当時、中国側がそのような電話をかけた事実はなかったようで、このツイートはトランプ大統領が株価の下落を食い止めるために発した「嘘」、もしくは「勘違い」といわれています。トランプ大統領の過激な発言は、格闘家が試合前、対戦相手に浴びせる「トラッシュトーク」のようなものです。トランプ大統領は自らが発した脅迫や罵りのツイートが米国経済に悪影響をもたらし、2020年の大統領選再選を危うくすると感じたら、平気で前言を撤回し、時には嘘や勘違いツイートまで発信して、株価の下落を食い止めようとします。その結果、米国株は乱高下はするものの、ここ1年半ほど史上最高値圏で高止まり。ドル円もトランプ就任直後の高値1ドル118円は下回っているものの、2019年は104円~112円台の狭いレンジ内で上下動するだけ、という展開が続いています。
米国大統領再選のためなら、トランプ大統領がこれまで声高に叫んできた米中貿易戦争を一方的に停戦・終戦する可能性もありえます。米中貿易戦争の行方が不透明という理由で米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は9月に相次いで利下げに踏み切りました。世界中の中央銀行が金融緩和に走る中、その最大の理由だった米中貿易戦争が「終戦」ともなれば、大統領選イヤーの2020年に「トランプバブル」が発生してもおかしくないでしょう。むろん、中国から一定の譲歩を引き出さない限り、「もう、おしまい」と貿易戦争をやめることは考えにくいですが、トランプ大統領に「常識」はまったく通用しません。ウクライナ疑惑による弾劾調査でピンチに立たされた今は、なおさら株高・景気浮揚につながる点数稼ぎに走りたいところでしょう。
そこで今回は、ドル円をはじめとした主要通貨が1年後の2020年11月に迫った米国大統領選に向け、どのように動くかを、上昇・横ばい・下落のシナリオ別に検証してみましょう。
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