これからの外国為替場の行方 第99回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2018年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
政治的・地政学的リスクの賞味期限はやはり限られる
本稿のような月刊誌の連載で国内外の“政治ネタ”を扱ったところで、執筆した原稿が活字化されて読者の皆さんの目に触れるようになる頃には、事態が一変してしまっているというケースも決して少なくはない。
実際、前回更新分の本欄で取り上げた米中間の通商摩擦問題についても、4月初旬まで「対米摩擦引かぬ中国」、「米中 報復合戦の瀬戸際」などと熱く報じられていたものが、4月10日に行われたアジアフォーラムで中国の習近平国家主席が市場開放の方針を打ち出して以降は、何事もなかったかのように市場の話題から消え去って行った(いまだ抜本解決には至っていないが)。
次いで、4月13日に実施された米軍によるシリア攻撃にしても、土・日(14日・15日)を挟んだことで週明け16日には市場ですっかり消化済みとなり、結局は「米・英・仏各国のリーダーら(とくにトランプ米大統領)による政治的パフォーマンスを見せつけられた」との感だけが強く残ることとなった。
さらに、4月20日には北朝鮮の金正恩委員長が朝鮮労働党中央委員会総会において、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を中止する方針を表明。核実験場の廃止も発表するという驚愕のニュースが伝わった。思えば、昨年(2017年)は随分と関連のニュースに市場が振り回され、全体に北朝鮮絡みのリスク回避的なムードが強まるなかで、いたずらにドル円やクロス円が下値を模索させられた苦い記憶がよみがえってくる。
ことほど左様に、とかく政治ネタは気まぐれであり、やはり市場で材料視される時間帯も限られる(賞味期限は限られる)。その点は常に割り切って考えねばならないし、そのうえで「政治的・地政学的なリスクが市場で強く警戒されている状況にあるときは各国経済のファンダメンタルズがあまり重要視されなくなるものの、同リスクが後退すればあらためて過去の指標結果などを再評価しようとする動きが見られるようになる」ということも再認識しておきたい。
よろしいですか?