今年最大の調整が来る米国株 江守哲氏2019年11月6日朝便
グローバルマクロ戦略を採る江守哲氏の11月6日朝便の分析では、米国株は、いまの株価水準があまりに高く持続不可能な状態が続くことはなく、株価の調整は不可避と考えるのがきわめて自然とのことです。
その詳細を以下にご紹介したいと思います。
【米国株のトレード戦略】
米国株はダウ平均とナスダック指数が過去最高値を更新しました。引き続き堅調ですが、この日の上値はかなり重かった印象です。さすがに好材料は織り込まれたようです。とはいえ、大きく下げる材料もなく、投資家は手仕舞い売りを急いでいないようです。米中貿易戦争の緩和が買い材料視されていますが、米政権から頻繁に「交渉は進んでいる」との発言が出てくるところをみると、実際にはそうではないと感じるところもあります。これらの問題は長期化せざるを得ず、簡単に解決しません。そもそも、米中対立の発端はで知的財産権の問題であり、ハイテク分野の問題です。これらはすぐに解決することはないでしょう。ファーウェイとZTEへの圧力をさらに強める可能性も指摘されています。いまの市場はこの問題に対してあまりに楽観的過ぎるように感じます。
一方、バリュエーション面ですが、S&P500のPERは短期見通しで18.90倍、長期見通しでは17.16倍と、ここ最近で最も高い水準に切り上げました。このような水準は、1999年から2000年のハイテクバブルのとき以外に見たことがありません。それだけ割高な水準であり、持続可能ではないでしょう。市場がこの点を理解せずに買っていることだけは確かです。過去のS&P500のEPSと株価の前年比の動きは基本的に同じように動きますが、いまの株価水準があまりに高いため、両者の変動は大きく乖離しています。このような不自然かつ持続不可能な状態が続くことはありません。株価の調整は不可避と考えるのがきわめて自然でしょう。
いつもウォッチしている「Fear&Greed Index(FGI)」はとうとう89にまで上昇しました。18年以降ではもちろん最高水準です。なかなか見ることができない水準です。このような歴史的な水準に切り上げたあと、株価がどのように変動したかをしっかりと記憶にとどめるようにしましょう。このような水準に上げることはめったにありませんので、記念になるでしょう。この指FGIは「Extreme Greed」、つまり究極的に欲深い水準の領域にあります。これで調整に入らなければ、驚くしかありません。株価の調整は不可避、必至といわざるを得ません。過去には株価は大きく調整しています。また、VIX先物のショートは最近では最も多い水準にまで拡大しています。これは投資家の楽観度合が究極的に大きくなっていることを示しています。
これらから、株価調整の準備は「完全に」整ったとの考えは変わりようがありません。このように考えないことのほうが、無理があります。あとは、株価調整を待つだけです。いまの株価に割高感はないと指摘する市場関係者もいるようですが、ポジショントークであることは明白です。客観データを見れば、割高との判断にしかなりません。テクニカル的にも過熱しすぎです。いまは株式市場からいったん離れるべき水準であるといえます。現段階ではショートを維持し、下げを待ちます。可能であれば、過去最高値水準でショートを増やします。資金管理をしっかりと行い、さらに上げた場合にも備えます。個人的には昨日の水準で売り乗せています。
11月に今年最大の調整が来るとの見方も維持します。これは年初から申し上げてきたことです。これも取り下げるつもりはありません。S&P500は下げに転じた場合には、3000、2970、2935にそれぞれサポートがありますので、これらを下抜けるかを確認します。そのうえで、200日移動平均線が位置する2890が意識されるでしょう。これも下回れば、ISM製造業景況感指数との関連でターゲットされる2750前後までの調整が視野に入ることになるでしょう。ここまで下げれば、来年に向けたロングを検討したいと考えます。この考えはこれまでと全く変わりません。
製造業PMIが上向きになってきています。また、中国のOECD景気先行指数がすでに底打ちし、回復過程にあります。これらは来年の株価の上昇の可能性を示唆しています。そのため、今回の下げは、来年に向けた絶好の買い場になる可能性があります。いまはその買い場を待つ姿勢です。安くなったところで買いたいところです。S&P500の動きから、来年は上昇することがわかっています。できればS&P500で2800ポイント以下を狙いたいところです。過去の予防的利下げを3回行ったケースでは、株価は確実に上げています。ただし、大統領4年目の平均上昇率は5%程度です。来年は株価が上昇する可能性が高いといえますが、上昇率は10%を下回る可能性が高いと考えられますので、大きな期待はしないほうが賢明でしょう。
Written by Hayakawa
よろしいですか?