これからの外国為替場の行方 第118回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
※この記事は、FX攻略.com2020年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
米株価指数は最高値更新もドル円の上値は重いまま
前回更新分の本欄で、米国株の今後について「S&P500種には少し長い目で3200ポイントあたりが次の上値の目安になってきてもおかしくない」などとし、ドル円が109円処の節目水準をクリアに上抜けるかどうかは「一つに、主要な米株価指数が史上最高値を更新する強気の展開となるかどうかにかかっている」などと述べた。
実際、S&P500種は執筆時までに3142ポイントまで上昇する場面があり、NYダウ平均も連日のごとく史上最高値を更新する展開となっている。こうした状況は大方想定していた通りなのであるが、如何せんドル円の上値は相変わらず重い。
実際、執筆時のドル円は、依然として200日移動平均線と109円処の節目をクリアに上抜けたとは言えない状況で、1か月前とほとんど変わらない水準で推移しているのだ。それは一つに、善かれ悪しかれ「米中貿易協議の進展状況が10月下旬から1か月間、あまり変わらなかったこと」に因るとみていいだろう。
既知のとおり、かねて11月に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、開催地であったチリの反政府デモ激化で中止となり、結果的に米中首脳会談も先送りされることとなった。
事前に、両国首脳はチリでの首脳会談の場において貿易交渉の「第一段階」での合意文書に署名する見通しとされていたが、一部では「合意内容の最終的なすり合わせが間に合わない」との見方もあったわけで、その意味からすればAPEC首脳会議自体の中止は、両国にとって結果オーライだったと言えるのかもしれない。
その実、11月末を間近にした執筆時点においても、なお合意文書への署名は行われておらず、それ以前に次の米中首脳会談の場所も日程も定められていない。それでも、関連のニュースは日々様々な形で伝えられており、基本的には「合意をめぐる重要問題の解決で共通認識に達しようとしている」といった報道内容であることから、少なくとも米・日の株式市場は進展期待をずっと抱き続けている。
むろん、米株価は米金利が低水準に居留まっていることに支えられている面もあり、それは10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で事前の予想通り、今年3回目の利下げ実施が決定されたことと、その後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による会見での発言や議会証言の内容が「どちらかと言えばハト派寄りであった」と捉えられていることが大きいと見られる。
パウエル氏は、議会において米消費が底堅く推移していることを認めながらも、一方で「米経済成長の下支えに向け『適切に』行動する」とも述べ、追加利下げ実施の可能性を封印していない。
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