外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|年始暴落→春リバウンド!?年末年始相場のアノマリーを検証】
2020年に向けた年末年始相場もいよいよ佳境に入ります。ここ5年間、為替市場や株式市場は、年末年始に必ず暴落に見舞われています。果たして今回は? 争点になるのは米中通商交渉の進展具合ですが、それは口実に過ぎない部分も。ドル円チャートで過去の値動きと乱高下の原因を振り返ることで、年末年始相場の傾向と対策を探ります。
※この記事は、FX攻略.com2020年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
佐藤正和さんプロフィール
さとう・まさかず。邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演する他、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
年始に波乱相場が連続したことで、18~19年は12月早々、暴落する異例の展開に
2020年が間近に迫った今、為替市場は年末恒例の「クリスマスラリー」に沸いているでしょうか? それとも米中通商交渉が暗礁に乗り上げ、乱高下相場に逆戻りしているでしょうか? この原稿を執筆している11月下旬時点では五里霧中の状況ですが、どちらに転んでいるかは、ひとえに「米中通商交渉が進展しているかどうか」にかかっているのは間違いないところです。ここ数年の年末年始相場は大荒れの展開が続いてきました。しかし、10年20年という長いスパンで見ると、秋口の9月頃からドル円や株価が上昇を始め、年末高で無難に終わるのが通例でした。そこで今回は、過去の年末年始相場を検証し、すでに残り少なくなった2019年の年末、来たる2020年の新年相場の行方を占ってみることにしましょう。
まずはチャート①をご覧ください。2018年9月から2019年3月まで、ちょうど1年前の年末年始を挟んだドル円の値動きです。2018年のドル円は好調な米国経済や米連邦準備制度理事会(FRB)の相次ぐ利上げを好感して、3月安値104円台から10月高値114円台まで順調に上昇が続きました。11月、12月も高値保ち合いが続いていましたが、12月5日には、中国通信機器大手ファーウェイの副会長が米国の要請によりカナダで逮捕され、米中間の緊張が高まります。トランプ大統領がメキシコ国境の壁建設問題で連邦政府のつなぎ予算案に署名しなかったことから、政府機関が相次いで閉鎖される事態も発生。緊迫した状況が「総悲観」に転落する決め手となったのは、12月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で決まった年内4度目の利上げでした。タカ派のFRBが米国景気をオーバーキルしかねない、という不安や懸念が一挙に広がり、ドル円も急落します。2019年1日3日には、新年早々の薄商いの中、一時104~105円の長い長い下ヒゲ安値をつけるに至りました。
しかし、1月4日の米国雇用統計が予想外の好結果だったことや、同日、12月急落の引き金を引いたパウエルFRB議長が金融政策についてハト派的な発言をしたことで市場の雰囲気は一変。1月初旬からはゆるやかな反転上昇に転じ、4月中旬には米中通商交渉の進展期待もあって、112円台の高値をつけました。これまでも年始早々の乱高下はありましたが、欧米金融機関の決算が目前に迫り、市場全体がクリスマス休暇モードに入る12月に金融市場がこれほど動揺するのはかなり珍しいことでした。その背景には、2016年以降、1月の新年相場がスタートすると、きまって金融市場が乱高下する状況が連続してきたことがあります。「年始に一波乱ある」という意識が染みついた投資家が、ある意味、フライング気味に、我先にと、リスクオフに走ったのが2018年12月のFRB利上げショックの一因だったといえるかもしれません。そう考えると、2020年に向かう現時点の年末相場で、すでに波乱が起こっていてもおかしくありません。当然、2020年新年相場が波乱に見舞われる可能性も十二分にあります。「年末年始は相場が荒れる」と身構えている投資家の不安心理が実際に波乱の相場を呼び込んでしまう面も否定できないのです。
よろしいですか?