これからの外国為替場の行方 第96回[田嶋智太郎]
田嶋智太郎(たじま・ともたろう)さんプロフィール
経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
日銀の異次元緩和策に「出口」などあるのか?
ついに2018年(=戌年)の幕が開けた。当たり前のことではあるが、戌年というのは「4年に一度の統一地方選と3年に一度の参院選が同じ年に行われる12年に一度の亥年」の『前年』である。また、件の亥年にあたる来年の10月には消費税率の再引き上げも予定されている。
よって、政府・与党としては何が何でも今年、来年と景気の好調な流れを持続させたい。また、安倍首相にしてみれば、景気鈍化によって消費税率の再引き上げ時期をまたも延期するようなことは絶対に避けたい。
そのうえで、今年の自民党総裁選において「総裁3選」を確実に勝ち取り、来年の統一地方選と参院選で与党の基盤をより強固なものとし、いよいよ悲願の憲法改正を実現に導きたい。
したがって当面、基本的に政府は景気刺激的な政策の運営に努めようとするだろうし、当然、日銀もそれに足並みを揃えようとするだろう。「株価が命」の安倍政権が、円高の行き過ぎを為す術もなく見逃すわけはないし、黒田日銀が自分からわざわざ円高のタネを振り撒こうとするはずもないだろう。
実際、1月22—23日に行われた日銀金融政策決定会合は現行の政策方針の維持を決定し、後の記者会見では黒田総裁が「いまだ(金融緩和の)出口を検討する局面に至っていない」ときっぱり言い切った。
その後、一旦ドル円は円安方向になびいたものの、折から続くドル安の強い流れには抗しきれず、最終的には再び円高方向に向かう結果となった。それでも、黒田総裁が「今しばらく出口に向かう姿勢を微塵も見せてはならないと覚悟している」ということだけはわきまえておきたい。
決して大袈裟でなく、当面は口が裂けても「出口」を(「で」の字でさえも)口にできないと黒田総裁は考えているはずである。現状では、それを口にした途端、ドル円やクロス円、日経平均株価などは一旦急激に値を下げるに違いなく、現状において筆者は個人的に「果たして、日銀の異次元緩和策に『出口』などというものがあるのだろうか」とさえ考えてしまう。
いずれにしても、まだまだ日銀は超緩和的な政策を継続せざるを得ないだろう。その一方、すでに米国では米連邦準備制度理事会(FRB)が追加的利上げの継続とリスク資産の規模縮小を始めている。
「理屈だけで外国為替相場が動いているわけではない」ということは百も承知である。が、やはり日米の金融政策の方向性がこれほどまでに大きく異なるという動かしようのない事実に、いずれ相場が寄せようとするときは必ずや訪れるだろう。
よろしいですか?