【無料全文公開】キャリートレードとは?[遠藤寿保]
「キャリートレード」という言葉をよく見聞きしますが、その意味をしっかりと理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。そこで今回は、FXにおけるキャリートレードの仕組みや特徴、そして円キャリートレードについて遠藤寿保さんに解説してもらいます。
遠藤寿保さんプロフィール
1998年、ひまわり証券で日本初となるFX事業チームに参加。2007年、FXZERO株式会社取締役を経て、現在YJFX!マーケティング部に所属。98年以降、投資家向けのコンテンツづくりやFXの企画等に携わった経験を生かし、FXエバンジェリストとして、情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。
金利差に着目して差益を狙う取引
キャリートレードとは、低金利通貨を借り入れし(売り)、高金利通貨を保有(買う)することで、その金利差で利益を狙う運用方法です。FXの場合ですと、金利差の受け払いをスワップポイントといいます。また、低金利の日本円を売って高金利通貨を買うことを「円キャリートレード」と呼びます。最近では、日本以外の先進国が金融引き締めに向かっていることから、円キャリートレードという言葉が多く出始めています。
メリット・デメリット
キャリートレードのメリットは、「高金利通貨買い/低金利通貨売り」のポジションを持ち、翌日まで保有することで、その金利差(FXでいうスワップポイント)を受け取ることができる点です。
FXの場合、取引金額にはレバレッジが効いているため、外貨預金をレバレッジ取引する行為と似ています。しかも金利差は日々発生しますので、取引期間に定期預金のような縛りがありません。
デメリットとしては、定期預金のように一定期間の金利が固定されているものではないので、対象国の政策金利の変更などで、受け取りのスワップポイントが減少したり、逆転したりする場合があります。また、キャリートレードが必ずしも上昇相場になるとは限りません。そのためスワップポイントの受取額より、為替差損額が大きくなることもありますので注意が必要です。
日本のFX個人投資家「ミセス・ワタナベ」
2004年当時、日本においてはバブル崩壊の影響が長引き低金利が続いていましたが、米国・欧州・オセアニアを中心に好景気となり、世界の金融市場は高金利に向かっていました。ドル円を含めたクロス円のロングを保有していると、スワップポイントを得ることができ、対円(日本)の金利差からクロス円全般で上昇トレンドを形成しました。
当時、東京時間といわれるAM8時くらいからPM3時くらいの時間帯は、クロス円全般が下がりにくく上昇する傾向となっていました。海外のディーラー・マスコミの間では不思議な現象といわれだし、この原因を探っていくと、日本のFX市場の拡大時期であり、リテールと呼ばれる一般投資家が多数参加。主婦やOL・サラリーマンを中心としたクロス円の買い注文が為替市場を動かしていることが判明しました。
当時は少額の証拠金でレバレッジをかけて取引する人が多く、取引量はインターバンクの東京時間の取引量の半数を超えるともいわれていました。この要因が、やがて世界中に伝わり、日本のFX個人投資家群を指す「ミセス・ワタナベ」という呼び名が生まれました。
円キャリー中の値動きの特徴は、緩やかな上昇となり、その上、中・長期保有でスワップポイントがたまることから、一般投資家が買い時を多少間違ったとしても最終的に利益になりやすかったのです。この「円キャリートレード」全盛時は、書店に主婦やOLが出版したFXの必勝本が平積みで多数販売されていて、「FXバブル」ともいえる賑わいとなっていました。
円キャリートレードの終焉と再来
先進国の経済成長は、常に右肩上がりではありません。景気が後退すると、金融引き締め政策(高金利政策)から金融緩和政策(低金利政策)へ移行され、経済をコントロールすることとなります。
そうなれば、円キャリートレードで利益が出やすい状況も長くは続きません。2007年以降は「サブプライムローン問題」「リーマンショック」から派生した金融危機で、マーケット全般が暴落し始め、先進国の金融政策が利下げ方向となりました。クロス円の買い保有で得ていたスワップポイントも小額、もしくは逆転となり、マーケットも全体的に下落傾向となると、書店のFX必勝本は姿を消し、ミセス・ワタナベという言葉も使われなくなっていきました。
そして2017年。当時とはいろいろな面で状況が違いますが、現在、日本以外の先進国が金融正常化に向け、利上げや金融引き締め時期に入っていることは間違いありません。ドル円を中心としたクロス円全般のスワップポイントも増加気味になっています。
先進国の金融政策は、一定期間は同方向となるため、円キャリートレードが有効な投資手段となる可能性があります。円キャリートレードが有効な期間には限りがあることを認識しながら、試してみるのも良いかもしれません。ミセス・ワタナベというワードが、ニュースに再登場するのも時間の問題ではないでしょうか。
※この記事は、FX攻略.com2017年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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