【2020年4月21日】原油相場が歴史的大暴落-江守哲のリアルトレーディングストラテジー
『江守哲のリアルトレーディングストラテジー』
2020年4月21日号より一部抜粋
〔EQUITY & BOND MARKET〕
【米欧株式・債券市場の市況解説・分析】
米国株は原油価格が初めてマイナス圏に沈んだことを嫌気し、反落しました。この日のWTI原油先物相場は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要減退懸念に加え、貯蔵能力の限界到達で供給過剰が一段と進むとの見方も重石となり、5月限は史上初のマイナス価格となりました。清算値は306%(55.90ドル)安の1.バレル=マイナス37.63ドルで、一時はマイナス40.32ドルまで下落しました。前例のない原油安で業績悪化が確実視されるエネルギー株などに売りが膨らみ、ダウ平均は一時615ドル安まで下落しました。ダウ平均が前週までの2週間で3200ドル近く上昇していたこともポジション調整の売りを誘いました。今週も新型コロナ問題で打撃を受けた米主要企業の1-3月期決算の発表が相次ぐため、投資家の間で警戒感が広がっているもようです。
一方、各国の外出制限で恩恵を受けているインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムや動画配信大手ネットフリックスなどは買われ、相場の下支え役となりました。アマゾンは0.8%高、ネットフリックスは3.4%高でした。新型コロナのワクチンや治療薬の開発に期待が高まるヘルスケア株の一角にも買いが入りました。ただし、ボーイングが6.8%安とダウ平均の下げを主導。化学大手ダウが5.7%安、エクソンモービルが4.7%安、シェブロンが4.1%安と軟調でした。S&Pエネルギー指数は3.7%安でした。エネルギー指数は年初から45%下落し、11セクターで最も大きく下落しています。
米石油サービス会社ハリバートンの第1四半期決算は、原油安が響き最終赤字に転落する一方、特別項目を除いた損益は市場予想を上回る黒字となりました。純損益は10億2000万ドル(1株=1.16ドル)の赤字。前年同期は1億5200万ドル(同0.17ドル)の黒字でした。特別項目を除く1株当たり損益は0.31ドルの黒字で、リフィニティブのアナリスト予想平均である同0.24ドルを上回りました。シェールの加圧揚水事業に絡む減損などで11億ドルの税引き前損失を計上しました。また、今年の設備投資計画を約50%削減し、8億ドルとしました。
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【米国株のトレード戦略】
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市場はかなりきな臭くなってきたように感じています。株価もかなり戻しましたので、これからは下落の第二弾に要注意でしょう。過去の値動きについては、すでに何度も解説していますので、あえて繰り返しませんが、過去最高値から30%以上下げた際に、今回のような水準で下げ止まったことは過去ありません。このデータも注視しつつ、さらなる下落の可能性を念頭に置きながら対処したいと考えます。米主要企業の決算発表が進んでいけば、第1四半期の実体がつまびらかになり、さらに将来の収益見通しが悪化することに市場は反応していくことになるでしょう。
短期トレード戦略では、主要株価指数ではダウ平均とS&P500のロングは解消です。ナスダック指数はロング維持、ラッセル2000は新規買いになっています。しかし、VIXはとうとう新規のロングになりました。リスクオフのパターンになりつつあります。株式指数先物はポジションを落として、VIXのロングに傾けようと考えています。崩れた場合に備えます。日柄や水準的にもそろそろ戻りいっぱいでしょう。これらの戦略はファンダメンタルズ材料を考慮せず、テクニカル分析を基本とした戦略です。このような短期トレード戦略も組み合わせることで、下落相場に対処することができると考えます。
長期的なポートフォリオ戦略では、下げた時に買い増す戦略は継続です。いまはその局面ではありません。底値を割り込めば、さらに買い増したいと思いますが、その場合でもかなり慎重に行うつもりです。高値から30%、35%、40%、45%、50%と5回程度買い下がれるように資金を振り分けています。まだ30%分の買いしか行っていませんので、下げても何も問題はありません。下げなければ、無理に買いません。今回は高値から30%下げています。このパターンでは、最大50%の下落になってもおかしくないと考えています。世界恐慌では7割以上下げています。ここまで見る必要はないとは思いますが、とにかく資金的な余裕だけは常に持っておきたいところです。
世界恐慌並みの景気の落ち込みが懸念されています。世界恐慌以降で高値から30%を大きく超える大幅安の局面は5回ありました。平均で見ても底値を付けるまでに「1年半」はかかっています。今回の高値は今年2月ですので、来年の夏場まで下落基調が続く可能性があることを大前提に、買い下がりのタイミングを計ります。長期投資はそれくらいの時間軸で見ていくことが肝要です。
【日本株のトレード戦略】
日経平均株価は上値の重い展開になってきました。押し目買いも入っているようですが、現状で期待できるのは外資系大手の先物の買い戻しくらいであり、株価の上値の重さが鮮明になっています。個人投資家は主戦場を新興株に移しており、これが指数の押し上げにつながっていますが、これもそろそろ警戒が必要でしょう。いずれ高値掴みから評価損の拡大につながるリスクがあり、これが再び国内市場の疲弊につながる可能性があるため、要注意といえます。
新型コロナからの回復への期待は根強いものの、日本は対処が遅れたため、外出自粛の解消も遅くなるでしょう。まだまだ感染者が増えている状況ですので、政府も慎重姿勢を崩さない可能性が高いといえます。5月6日で緊急事態宣言が解消されるとは考えていません。さらに延長され、経済活動への影響はさらに広がるでしょう。日本の主要企業は決算ができない状況になっています。今期の見通しも出せないでしょう。企業価値を図ることができない中で、バリュエーションがどうなるのかわかりません。そのような状態で、個別企業を買うのは相当リスクがありそうです。慎重姿勢が求められます。
日経平均株価は再び2万円が遠くなってきました。押し目があれば買い投資家もいそうですが、現状では買う理由は近い将来のコロナからの回復だけでしょう。それに期待したいところではありますが、いまは慎重に見ていきます。20500円から20800円が戻り高値としてきましたが、米国株の下落もあり、遠くなりそうです。
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